[展覧会] メトロポリタン美術館展

六本木の国立新美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」を見てきました。

コロナ以来、東京の展覧会はいつも躊躇ってしまいますが、今回はどうしてもカルロ・クリヴェッリの《聖母子》が見たくて行ってきました。

カルロ・クリヴェッリはイタリアの初期ルネサンスの画家で、緻密な描写と明快な色彩と形が特徴です。テンペラの多彩な技法を駆使した作品は装飾性が高く、独特な緊張感があります。


カルロ・クリヴェッリ《聖母子》

聖母とキリストは左下に止まっているハエの方を向いています。ハエとリンゴは罪と悪の象徴、左上にあるキュウリとキリストが抱いているゴシキヒワは贖罪の象徴だそうです。クリベッリの絵にはよくキュウリが描かれていて疑問でしたが、贖罪という意味が分かったのは収獲でした。(キュウリがなぜ贖罪?の疑問はありますが)

また、キリストはハエの方を向いていますが、拡大してよく見ると目は贖罪のゴシキヒワをじっと見つめています。翼を広げたゴシキヒワが胸に十字架を持つように描かれているのも興味深いところです。
個々の描写はリアリズムを追求しながらも、全体に非現実的で不思議な世界が広がっています。その不思議な空気感にとても惹かれます。作品は教会建築を模した金色の額縁に収まっていて調和し、その存在が一個の宝石ように見えました。

他に印象に残った作品は、北方ルネサンスのディーリック・バウツの《聖母子》です。精緻に描かれた聖母子の肌が素晴らしく、油彩のつややかなマチエールが一層引き立てていました。バウツは顔に特徴がある画家で微妙なニュアンスの表情が多いように思います。ディーリック・バウツ《聖母子》

ピエロ・ディ・コジモの《狩りの場面》は太古の人間と半人半獣が森の動物を襲うという、ルネサンス期の最も特異な作品の一つだそうです。ほの暗い森のあちこちで殺戮が行われていて、それらが細長い画面に遠近法を用いて巧みに配置されていました。ずっと見ていたくなるような面白い絵でした。ピエロ・ディ・コジモ《狩りの場面》

久しぶりに質の高い、素晴らしい絵画を見ることができて疲労困憊しましたが、至福の時間でした。

 

「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

 

 

[展覧会] メトロポリタン美術館展” に対して2件のコメントがあります。

  1. ワイン より:

    >kyouさん ひさしぶりにkyouさんの美術館鑑賞のブログ記事を読ませていただいて、とても興味深く感じました。宗教画(特にルネサンス期の絵画)は絵に込められた寓意性をわかっていると、とても面白く鑑賞できるのですね。それにしてもどうしてキュウリが贖罪?聖書のどこにもキュウリなんて出てこないのにね。
    私はつい最近、茅ヶ崎市立美術館「ヨーロッパ古典絵画の輝き 模写に見る技法と表現」という展覧会を見に行きました。テンペラ画というのは絵画であるだけでなく彫金の技術なども取り入れられていて、それはもう美しく、そして制作に時間のかかる芸術作品なのだと知りました。自分の中の絵の常識がいかに狭いものだったのかを思い知った感じです。
    メトロポリタン美術館展、5月末までなんですね。

    1. kyou より:

      いつもありがとうございます。
      >聖書のどこにもキュウリなんて出てこないのにね
      そうなんですか、どうしてでしょうね。ネットでちょっと調べてみたら薬用植物(利尿、ほてりを冷ます)などがあるようなので、昔はデトックス的な感じだったのでしょうかね。
      茅ヶ崎市立美術館はとても良さそうですね。知りませんでした、教えてくださってありがとうございます!行けたら良いですが。
      若いころテンペラと油彩のミックスで描いていました。黄金背景テンペラとかやってみたいです。

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