[展覧会] 「キュビスム展 美の革命」
上野の国立西洋美術館で開催中の「キュビスム展」に行ってきました。
久しぶりにキュビスムの作品を見ましたが、すでに絵画史に輝かしい地位を築いていることから古典的な美しささえ感じました。
とは言え、キュビストたちが従来の写実的な絵画から脱却し、新しいものの見方を提示し、新たな価値の創造を掲げた時の衝撃は凄まじかったと思います。まさに「美の革命」です。
最初の展示はキュビストたちの源泉としてポール・セザンヌやアンリ・ルソーの作品でした。続いてパブロ・ピカソのプリミティブな作品、その後にジョルジュ・ブラックとピカソのキュビスムの作品に繋がっていきます。新しい美の発見と、モチーフを多視点で捉えて解体と再構成していくキュビスムの手法が、一連の流れで分かりやすく感じられました。
上記の《ギターを持つ女性》《ヴァイオリン》は、コラージュやパピエ・コレ(画面に新聞紙や広告など異質なものが貼り合わされた作品)を踏まえたうえで、あたかも本物の紙や木が貼ってあるかのように描いた、だまし絵風の作品で「総合的キュビスム」と呼ばれています。また、第一次世界大戦後のピカソの《輪を持つ少女》では初期の原型が殆んど分からない「分析的キュビスム」から比べると、従来の再現的絵画の要素や調和のある美しさがかなり復活しているのが印象的でした。
周りに人がいないので比較できないのですが、どちらも大きな作品です。(左ドローネー《パリ市》、右レジェ《婚礼》)
《パリ市》は、縦267×406cmの大作です。一目見れば三美神がパリ市を荘厳している絵だと感じられる作品で、祝祭的な高揚感に包み込まれるような明るい作品でした。心地よい画面分割や構成がなされていて、新しさの中にも安定感があるように思えます。説明書きによるとこの後ドローネーは、鮮やかな色彩の作品から抽象を先駆する新境地を開いたとありました。
今回改めてキュビスム作品を見てみると、画家も解放され、鑑賞者も解放される絵画だと思いました。新しい価値の創造が自由を生み、自由がまた新しい価値を生む。それが加速された時代だったのだと感じました。