[展覧会] マティス展

上野の東京都美術館で開催中のマティス展に行ってきました。

20年ぶりということで質・量とも充実した回顧展で、生涯をとおして作品の表現スタイルを追求しているマティスの生き方に大変感銘を受けました。

印象に残った作品をいくつか。(写真撮影可能エリアにて撮影)


《夢》

最晩年まで特別なモデルだったというリディア・デレクトルスカヤを描いた作品。作者とモデルとの信頼関係が伝わってくるようです。しっかりとした肉の重みと同時に、薄塗りの油彩による軽やかさもあるように思います。肘のつくる肌色のV字と背景の青色の三角形の対比が印象的です。奥行きを表現しつつ色面の平面性も強調しているようでとても好きな作品です。

 


《夢》のための習作

こちらは眼を開けていますね。大きな眼と張った顎。意志的な感じがします。

 


《座るバラ色の裸婦》

同じモデルさんを描いたもので、こちらも油彩の薄塗り、線描きという感じ。身体のヴォリュームをこれだけの線で表現できるのが素晴らしく、ただただ感動です。
冷静に見ると左の掌が大きいけれど、絵のバランス的に違和感ないのも逆にすごいです。曲線と直線が効果的に響きあって視線を画面上に循環させているように思えました。

 


《赤の大きな室内》

サイズが146×97cmの大きな絵です。机や敷物、画中画まで組み込んで複雑な空間を作っていますが、壁と床の境界を無くして赤で統一しているので平面的にも見えます。動物の敷物がちょっとコミカルで見ていて明るく楽しくなります。

 


《黄色と青の室内》

《赤の大きな室内》を一回り小さくしたくらいのサイズです。黄色と青のコントラスト、四角い線と曲線のコントラスト、差し色の白や緑がアクセントになっているのでしょうか。ずっと見ていたくなるような心地よいリズムのある絵ですね。

 


《主題と変奏E10》

魅力のあるドローイングってすごいと思います。正確で丹念なデッサンでは及ばない領域に楽々と存在しているように思えるのです。
またこの作品はキャプションに、墨/簀の目紙(すのめし)「PMファブリアーノの透かし入り」とありました。自分がいつもファブリアーノの水彩紙を使っているので、あれっと目を惹いたわけです。他にはアルシュ紙が多かったようですが。

展示の最後にマティスが心血を注ぎ込んだロザリオ礼拝堂に関する作品と、現地で映したビデオがありました。「形と色からなる一個の全体性として自分を表現する機会を得た。自分が選んだのではなく運命によって選ばれた仕事」というマティスの言葉が心に残りました。

マティス展

[展覧会] マティス展” に対して2件のコメントがあります。

  1. kyou より:

    ワインさんの記事を読んで行きたくなったので、良い経験をさせてもらいました。ありがとうございました。
    >マチスの裸婦像をみていると、レオナール・フジタを思い出しませんか?
    そうですね、言われてみるとモデルの存在感とか、線描き、薄塗りでそんな感じありますね。
    >文章で感想を残すことで印象が深まるものだと思います。なにか、自分の心の糧になるような気がします。
    ええ、言語化するとはっきりするというか。難しくてうまく書けないこともありますけど、頭の体操的なところもあります。

  2. ワイン より:

    kyouさんのマチス展の感想、あらためて私が感じたこととは別に気づかされたことがありました。画面上の構成など、言われてみると大変興味深いです。私は油彩画の経験がないのでわからなかったけれど、マチスは絵の具を薄く塗っているのですね。それでいて絵のモデルのなんと存在感の大きなこと!
    マチスの裸婦像をみていると、レオナール・フジタを思い出しませんか?
    美術館で一部の作品とはいえ、写真を撮っても良くなったこと、すごくうれしいですね。自分で写真を撮ったり、文章で感想を残すことで印象が深まるものだと思います。なにか、自分の心の糧になるような気がします。

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