[展覧会] 杏咲く頃-絵筆と歩いたシルクロード 小間嘉幸絵画展
このところ展覧会はすっかりご無沙汰していましたが、横浜ユーラシア文化館で開催中の「杏咲く頃-絵筆と歩いたシルクロード 小間嘉幸絵画展」を見てきました。
展覧会入り口
小間嘉幸(1929~2012)は中学の美術教師をしながら画壇で活躍し、1970年代から30年にわたりシルクロードをテーマとした作品を描き続けたそうです。本展では現地を旅したスケッチやそれを元に制作した油彩が中心となっていました。
印象に残ったのはスケッチブックに描かれた素描や淡彩で、人々や共に暮らす動物の様子は卓越した技量と温かく豊かな感性なくしては描きえないだろうなと思いました。
カシュガルの羊、女性たちなどのスケッチ ©Koma Noriko
油彩作品は旅のスケッチをもとに厚紙で作った人形を使って構図を考えたそうです。日本に帰ってから現地の空気感を反芻しつつ制作されたのかなと想像します。切り抜かれたモチーフの人やラクダはちょっと可愛いですね。
©Koma Noriko
館内の作品は嬉しいことに写真撮影も可能でした。(ネット投稿などの際には©Koma Noriko要記入)後でタイトルや説明が分かるのは有り難いです。
のどかで広がりのあるシルクロードの風景や穏やかで明るい人々の暮らしを見ると、自由に旅することができた小間嘉幸自身も含めて、現在の閉塞感のある世界とは何か本当にかけ離れた楽園のようにも感じました。
また、後にタリバンによって破壊されてしまったバーミヤン石仏や、ISの台頭により破壊され多くの文化財が失われたパルミラ遺跡は、それぞれ破壊される前の姿のスケッチと油彩作品があり、歴史的資料としても貴重だと思いました。
作者が描いたのは旅をしながら出会った珍しく美しい風景や遺跡、とりわけ人々の暮らしです。作品はどれも友好的なふれあいを愛おしむような幸福感にあふれています。自ずと見ている私も引き込まれ、実に心地よく穏やかになれる展覧会でした。
同じチケットで入れる常設展もユーラシアの様々なものがあって面白かったです。
イスラムの陶器
壁にかかっているのはお皿かと思いましたが養蜂箱蓋と記されてます。それほど昔ではなく20世紀前半の北西イランとありました。ずいぶん素敵な蓋ですね。
円筒印章
こちらは相当昔。西アジアで紀元前3300年頃から3000年間、石や貝で作られた印章が使われたそうです。縦3センチ前後の小さなもので、柔らかい粘土板の上を転がすと文様が浮きあがって見えます。上は人物と動物、ペガサス? 下は向かいあった人物が臼で何かついているようですが…。
館内は割と空いているので、コロナ下でも安心して友人と楽しい時間を過ごすことが出来ました。お近くの方は横浜散策の折に立ち寄られてはいかがでしょうか。
横浜ユーラシア文化館 「杏咲く頃-絵筆と歩いたシルクロード 小間嘉幸絵画展」