「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」
先日、東京国立博物館で開催中の「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」展へ行ってきました。会期も残りわずかで混んでいるとは聞いていましたが予想以上でした。
平日の10時半ころ現地に着いた時には既に50分待ち。急きょこの後に見る予定だった「ブリューゲル展」を先にして、結局午後3時ころから会場入りして閉館の5時ぎりぎりまで粘ってどうにか仏様を拝むことができました。
内容は素晴らしいの一言で、これだけの質の高い仏像が一堂に展列される機会は滅多にないと思いました。だから混むわけですが。
葛井寺(ふじいでら)の千手観音菩薩坐像をはじめ全国の御室派の寺からの秘仏、仁和寺・観音堂の実際の仏像(33体)と高精細画像の壁画によるお堂の再現など、見どころが多すぎてとても2時間くらいでは時間が足りませんでした。
葛井寺の千手観音像は実際に1041本の手があるそうで、千本以上の手を持つ千手観音は他に確認されていないとの事です。初めて目にすると幾重にも重なった細い手は恐ろしい感じがしました。千手観音像のお顔は柔らかく静かで、私には背中の手の重さをじっと受け止めているようにも感じました。救われたいという人間の欲望がこれほどの数の手を付けたのかもしれないとも…。それでもその美しくも煩雑な手の造形に反して、千手観音像の静かで慈悲深い表情に、唯々心を打たれました。
そのほかの仏像で印象的だったのは妙通寺の降三世明王立像と深沙大将立像。2.5m超の堂々たる体躯で前者が開口、後者が閉口で一対になっているそうです。
降三世明王は三界の神でシヴァ神さえ凌ぐ明王とのことで、像は足元でシヴァ神とその妻のパールヴァティーを踏みつけています。豪快!
また、仁和寺の愛染明王坐像、文殊菩薩坐像、悉建太子坐像の3体はどれも精巧で美しく、良いものは緊張感があると実感できる仏像でした。
特に面白かったのは、仁和寺・観音堂の仏様と高精細画像の壁画による再現です。しかもこちらは写真撮影可能なので混雑と相まって大変なことに(笑)
観音堂の実際の仏様による再現
並んでいるのは中央に千手観音、脇侍に不動明王と降三世明王、千手観音の従者である二十八部衆、加えて風神雷神の合計33体、実に壮観です。
一体ごとに個性的
時間が許せばバラエティ豊かな像をもっとじっくり見たいところでした。仏像が並んでいる裏側が通り抜けられるようになっていて、その左右の壁面に壁画がありました。
仏様の後ろに回れるようになっています
異国の様子や様々な仏様、下の段には地獄が描かれおり、真っ逆さまに地獄の業火に落ちてくる人、現世の殺生を見せられている人、その周りには気味の悪い生き物の姿などがありました。
真っ逆さまに落ちる人
鏡に現世の殺生が…
今回は仏像以外はあまり時間をかけて見ることが出来ませんでしたが、金銅五鈷杵、銅九頭龍鈴などの法具も見応え充分で、解説も分かりやすく勉強になりました。
出来るならもう一度足を運んで絵画や曼荼羅をゆっくり見てみたいけれど、ちょっと無理そうなのが残念です。もっと早い時期に見に行けば良かったなぁ…。
東京国立博物館 「仁和寺と御室派のみほとけ― 天平と真言密教の名宝 ―」
情報サイト「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」
“ 「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」” に対して4件のコメントがあります。
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>ワインさん
>やはり口コミなどの影響で、会期が終わりに近づくとたくさんの人が押し寄せるのかもしれませんね。
そうですね、行きたいと思ったのは早めに行った方が良いと、今更ながら学習しましたよ~。
>仏像のもつ深い内省的な表情、明王の、邪悪なものを踏みつけ退治するあの潔い正義の表情、どちらも心がすっと明るくなる気持がします。
おっしゃるとおりです。特に今回は素晴らしい仏様ばかりだったので、そのオーラというか、効力というか、抜群でした。
なかなか全国の仏様を拝むことはできませんからこの機会は貴重でした。私も恵まれて有り難いと思いました。
こんにちは。50分待ちとはすごいですね。やはり口コミなどの影響で、会期が終わりに近づくとたくさんの人が押し寄せるのかもしれませんね。
私は、改めて仏教美術の素晴らしさに感嘆いたしました。仏像のもつ深い内省的な表情、明王の、邪悪なものを踏みつけ退治するあの潔い正義の表情、どちらも心がすっと明るくなる気持がします。
私は、第2期がはじまってすぐの金曜日の夜に行きました。待ち時間はありませんでしたが、やはり中はそれなにり人が多かったのを覚えています。でも、行って良かったと本当に思いました。このような展覧会が身近で見られるのは本当に恵まれていると思いました。
>きよぴーさん
>お疲れさまでした~
どうも~、久しぶりにハシゴは疲れました。歳だわ~。
きよぴーさんは確か何回か行かれたような。本当に素晴らしい展覧会でしたね。
降三世明王立像と深沙大将立像、印象的ですよね。私は愛染明王とか、ああいうガっと強い感じが好きです。
>この手でどれだけの人の心を救ってきたのでしょうか。
>身震いがするほど、その存在感に心打たれました。
そうですね、存在感に圧倒されました。
ブリューゲル展と仁和寺展、はしごなさったのですね。
お疲れさまでした~
仁和寺展、会期終了も近くなったので、混みっぷりが半端ないですね(^^ゞ
前期・後期とそれぞれの展示を楽しみました。
とにかく、見応えのある展覧会でした。
妙通寺の降三世明王立像と深沙大将立像。
腰の部分にお顔が付いたり、手の組み方が小指を絡ませるようだっりして、
印象に残っている仏さまの一つです。
1041本の手を持つ、千手観音。ただただ見とれてしまいました。
この手でどれだけの人の心を救ってきたのでしょうか。
身震いがするほど、その存在感に心打たれました。