「英国の夢 ラファエル前派展」

渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「英国の夢 ラファエル前派展」を見てきました。

 今回は何と言ってもジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの傑作《エコーとナルキッソス》を見るのが楽しみでした。

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 展示は4つに分かれ、最初は「ヴィクトリア朝のロマン主義者たち」としてジョン・エヴァレット・ミレイやダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなどラファエル前派の起点となる画家たち、次は「古代世界を描いた画家たち」でギリシア神話や古代世界を唯美的に描いたローレンス・アルマ=タデマやフレデリック・レイトンなど。

 さらに「戸外の情景」ではウィリアム・ヘンリー・ハント、ケイト・グリューナウェイなど小品ながら見応えのある水彩が中心。最後は「19世紀後半の象徴主義者たち」としてジョージ・フレデリック・ワッツ、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスなどで締めくくられていました。

 ウォーターハウスの他に見たかったのは古代世界を超絶技巧で描くアルマ=タデマで、作品を見る度に質感を描き分ける描写力に圧倒される画家です。

《お気に入りの詩人》ではアルマ=タデマの得意とする大理石が描かれていてそのヒンヤリとした感じは絶妙で、小さく窓の外に見える風景の熱気との対照も際立っていました。

 また興味深かったのは《美しさの盛りに》と《打ち明け話》の2作品にサトイモ科の植物が描かれていた事で、一つはカラーもう一つははっきりしませんがどちらもこの植物独特の形の面白さが活かされているなぁと感じました。

 W・H・ハントをはじめとする水彩画はしっかりと描き込まれた作品が多く、いわゆる淡彩が多い日本のものとはだいぶ水彩に対する考え方が違うのではないかと思います。

 ハントの《卵のあるツグミの巣とプリムラの籠》は水彩とグワッシュで描かれたもので、それぞれの特徴を組み合わせて瑞々しさと存在感がありました。

 E.C.バーン=ジョーンズの《レバノンの花嫁》は縦が3メートル以上ある大作ですが水彩とグワッシュで紙に描かれている作品で、近くで見ると何枚か紙が繋いであるのが見てとれました。何より油彩と見まごう重厚な色調が素晴らしかったです。

 展示も最後になってやっと一番見たかったJ・W・ウォーターハウスの作品に対面できました。

 美男のナルキッソスに恋するニンフのエコーを描いた《エコーとナルキッソス》は伸びやかな筆遣いと緻密な筆遣いが効果的に織りなされていて、遠目には静かな画面に見えますが、近くで見ると大胆な筆遣いが分かり一層魅力的でした。ナルキッソスの足元に咲くスイセンもザザッと描かれているにもかかわらず、スイセンでしかありえない的確さは凄いの一言です。

 小説を元に描かれた《デカメロン》は若い女性たちが草の上に座り話し手の男性に耳を傾ける様子を描いたもので、草の緑を背景に女性の白い顔が浮き上がっているのが美しく、また画面にリズミカルに配置された衣装の色にも惹きつけられます。中でもドレスの紫色が全体の色合いに複雑さを与えているように感じました。

 ところで、ラファエル前派の画家たちの描く女性は、その画家ならではの好みの顔、理想の顔があって興味深いです。

 ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ウォーターハウスなど各々よく似た顔ばかり描くので見ればすぐ分かり、まるで浮世絵の歌麿美人、春信美人のようでもあり面白いなと思います。

 

Bunkamura ザ・ミュージアム「英国の夢 ラファエル前派展」

「英国の夢 ラファエル前派展」” に対して1件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >きよぴーさん
    >特に、ドレスから透けて見える女性の身体が大理石の冷たさをより際立たせているような気がしました。
    本当にそうですね。しっかり描き分けて凄い描写力です。

    >卵のあるツグミの巣とプリムラの籠』はお持ちかえりしたいなと思った作品でした。
    >今、プリムラを描いているので、その描き方に心奪われました。
    確かに!欲しいです~。
    プリムラですか、それはグッドタイミングでしたね。

    >フレデリック・レイトン『プサマテー』の後ろ姿、
    >もの言わぬ背中ですが、その背中から彼女の人生の重さに思いを馳せました。
    とても情感のある作品でしたね。レイトンも好きです。
    きよぴーさんのコメントを読んでもう一度見てみたくなりました。

  2. きよぴー より:

    この展覧会、先週行って来ました。

    『お気に入りの詩人』
    おっしゃるように、大理石の質感が圧倒的でした。
    無機質な大理石の存在を圧倒的にさせていたのものは、
    画家の技量はもちろんですが、そこに描かれている
    女性のドレスだったり、小さな窓から見える風景の描き方だったりするのでしょうね。
    特に、ドレスから透けて見える女性の身体が大理石の冷たさをより際立たせているような気がしました。

    『卵のあるツグミの巣とプリムラの籠』はお持ちかえりしたいなと思った作品でした。
    今、プリムラを描いているので、その描き方に心奪われました。

    フレデリック・レイトン『プサマテー』の後ろ姿、
    もの言わぬ背中ですが、その背中から彼女の人生の重さに思いを馳せました。

  3. kyou2 より:

    >もみじさん
    ラファエル前派が好きなのでよく見に行くのですが、今回はとても良い作品が多くて見応えのある展覧会でした。それにと水彩が思いの外多くて勉強になりました。

  4. もみじ より:

    4つに分かれた展示のそれぞれにkyouさんの感動が伝わってきます。

    描かれた大理石のヒンヤリ感!
    作品の質感!
    大胆な筆遣い!色調の素晴らしさ!
    的確な植物の描写などなど・・・

    どれをとっても憧れです(^.^)
    素適な時間を過ごされましたね。

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