『植物は〈知性〉をもっている』 『植物の描き方』
植物は〈知性〉をもっている 20の感覚で思考する生命システム
- 作者: ステファノ・マンクーゾ,アレッサンドラ・ヴィオラ,マイケル・ポーラン,久保耕司
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 単行本
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植物に知性はあるかと聞かれたら、誰もが返答に困るというのではないだろうか。
私達は知性というと、考えたり話したり、あるいは読み書きが出来たりということを思い浮かべる。
しかし植物は読み書きしている訳ではないし、肝心の脳みそがあるようにも見えない。
本書ではそもそも「知性」をどう定義するかが鍵になるといい、知性とは「問題が起きた時に解決する能力である」と定義されている。
すると、植物は独自のやり方で情報収集をし、複雑な方法で危険を回避したり、子孫を増やしたりしていることが思い当たる。
ある植物は虫に葉を食べられると特別な物質を放出しその虫を捕食する他の虫を呼んだりする、またマメ科植物は根粒菌と共生するがばい菌と根粒菌をちゃんと区別している。根は障害物を回避するし、お互いに絡まったりはしない。
植物は人間の頭のような集中司令室のようなものはないが自分の体の隅々で起こっていることが分かっていないわけではなく、情報は部分から全体に共有されて生命が維持され子孫を増やすことに繋がっていく。
難しいことは分からないが、部分というか小さな細胞レベルで判断している割に、部分に固執してない(切っても再生可能だし)というのも面白い。
つくづく植物は人間とは違う方法で知性的に生きているのだと思う。
最後にもう一つ、興味深かったのは宇宙で知性を持ったものを探す時、人間は自分と似た存在を探しているのではないか、というようなことが書いてあり、そうかもしれないなぁと。エイリアンは人間とは似ても似つかない植物的知性を有している存在かもしれないのだから。
将来、植物とコミュニケーションが出来るようになったら、現在感知できない様々なことが明らかになるのだろうなと思う。
ところで、この本の序文を書いているマイケル・ポーランという名前をどっかで見たような…、と思ったら以前読んだことがあった。
- 作者: マイケルポーラン,Michael Pollan,西田佐知子
- 出版社/メーカー: 八坂書房
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: 単行本
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取り上げる植物はよく知られている4つで、「甘さ」への欲望-リンゴ、「美」への欲望-チューリップ、「陶酔」への欲望-マリファナ、「管理」への欲望-ジャガイモ。
人間は植物に操られるのではないかという、植物の側から捉えた人間との関わりが興味深い内容だ。また全体を通して種の単一化に対してとても危機感を抱いていることが印象的な本だった。
- 作者: 盛口満
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2015/05/07
- メディア: 単行本
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本書に先立って『生き物の描き方』『昆虫の描き方』があり、やっと待っていた『植物の描き方』が出版されたので読んでみた。
植物の描き方とあるが完成までの過程を示したようないわゆる技法書ではなく、外へ出て植物を観察しその植物の「くらし」と「れきし」を踏まえつつスケッチし、「かたち」の持つ意味を理解すること、またその楽しさを教えてくれる本だ。
スケッチ作品はラフなものから精巧なペン画(ロットリング)まで、すべてモノクロで描かれているのも特徴の一つになっている。
氏は植物スケッチ(生き物スケッチ全般にいえることだが)の基本は、ウソをつくという点にかかっている、と言う。
ウソのつき方のポイントは以下の3点である。
1・ウソは、はっきりつく
2・ウソのつき方をうまくする
3・ウソはつきとおす
p17
これは実に的を射ていると思う。
そして完璧なウソは至難の業だとも思う。対象をよく知り仕組みや構造を理解した上で取捨選択ができないといけない。だからウソも訓練、年季が要るだろう。
また、中高で教員の経験がある筆者の文章は実に読みやすく、いたるところに人柄の良さや優しさが感じられた。
色々な場所で色々な植物との出会いやエピソードが、スケッチとともに生き生きと楽しく語られ描き方の本というより読み物として面白かった。何よりじっくり対象と向き合う時間の大切さ、手間ひまかけて描く意味を改めて感じた。
“『植物は〈知性〉をもっている』 『植物の描き方』” に対して8件のコメントがあります。
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>ゴンベッサさん
あけましておめでとうございます。
>植物は多様性があって大変に面白いですよね~。
本当にそうですね。専門に勉強したわけではないのでわからないことも多いのですが、植物関係の本を読むのが大好きです。
また、描いていてその植物独特の法則にのっとった形があるのが面白いところです。色々な植物の多様な形が描けるようになりたいです。
あけましておめでとうございます。
植物は多様性があって大変に面白いですよね~。
ランのように親バルブは成長しなくて子を吹き命をつなぐタイプ
サボテンの様の親も成長しつつ子をふくタイプ、樹木のように
大きくなって行き挿し木や取り木でも増えるタイプ。
皆同じ遺伝子で理論的には永久に生長出来るし同時に種を付け
違う遺伝子で子孫を繁栄させることが出来る。
種を付けるにも一方的に昆虫をだますタイプや
糞や腐った魚の匂いではえなどを集めたり昆虫を食べるタイプ
動くタイプと調べればきりがないですよね。
ボタニカルアート次の絵が早くみたいです。
>もみじさん
>成長の過程に、はっと驚くこと数知れずです。
本当にそうですね。私はそういう発見が無数にある植物をただ感心しながら描いているのが好きです。
>最後の「つきとおす」に笑ってしまった私でした(^.^)
>でも何だか、すきっとしました♪
同感です。でも、迷いなく描くって相当すごいことですよね。
植物の世界も不可解なことが多いですね。
成長の過程に、はっと驚くこと数知れずです。
特に地面から見えない地下茎や根!根は障害物を回避して生き抜く
力などを備えているのですものね。
これらを「知性」と表現したのも面白いです。
スケッチの基本!うそのつきかたの3点
ハッキリつく、つきかたをうまくする、つきとおす
最後の「つきとおす」に笑ってしまった私でした(^.^)
でも何だか、すきっとしました♪
>きよぴーさん
植物の色々な能力については別の本でも読んだことのあるものでしたが、それを「知性」だと定義したところがこの本の特徴だと思います。
それによって私達が持つ植物のイメージを一掃して、植物の能力(知性)が未来への発展のヒントになるかもしれないとしているのが面白かったです。
ちょっと植物を見る目が変わる感じですね。
『植物は<知性>をもっている―20の感覚で思考する生命システム』
図書館で予約してあります。予約の準備が出来ましたとメールがあったので、
明日取りに行く予定です。
植物が持つ知性って、一体何と気になって予約をしました。
人間が考える知性と違う方法での知性のあり方を読んでみたいと思います。
goodタイミングでのレビュー、ありがとうございました♪
>ワインさん
流石、持ってらっしゃいましたか。ペン画の明解さ、見ているだけで気持よくて描きたくなる気持ち分かります~。
でも、ペン画の最初に結構大胆にベタ塗りするじゃないですか、あれがミソって感じで難しそうだと思いました。きれいな点も修練かもしれませんが。
盛口先生の『植物の描き方』、私も持っています。とても面白い本ですね。そしてペン画がすばらしいですね。影響されてすぐにロットリングを買いに行きました(笑)植物の観察のポイント、そして科学的な絵を描く視点がわかりやすく書かれていて、目からうろこという感じがしました。