「白絵 -祈りと寿ぎのかたち-」

 神奈川県立歴史博物館で開催中の「白絵 -祈りと寿ぎのかたち-」を見てきました。

f:id:kyou2:20141108120146j:image:w350

神奈川県立歴史博物館「白絵 -祈りと寿ぎのかたち-」

 

白絵(しろえ)というのは大雑把に言えば、白い紙や白木に白の絵具で描かれた絵画のことで、(しらえ)とも読むそうです。

 チラシに用いられている白絵屏風は、もともとは平安時代に皇子の出産に際し、産所に立てられていた絹布の白綾屏風が、南北朝時代に「白い紙に白い絵具(胡粉や雲母)で描く」という形に変化したものです。

 実は以前、この白絵屏風をサントリー美術館で見て大変衝撃を受けました。(「BIOMBO/屏風 日本の美」http://d.hatena.ne.jp/kyou2/20071022

 初めて見た時はこの屏風は何度も使われるものと思っていましたが、今回、出産で使われる白絵屏風というのは使用後は廃棄するものだと知りました。ですから、どういう理由で残っているのかは分かりませんが、現存しているものは大変貴重なものになります。

 「使われなかった白絵屏風」なのか「捨てられなかった白絵屏風」なのか…そこはかとなくミステリアスです。

 この白絵屏風は経年劣化で、地の白がだいぶ茶色になっていますが、本来は真っ白な紙です。そこに胡粉や雲母で描かれた松竹鶴亀や水の流れは、もっと純白に輝いて清らかだったと思います。

 でも、現在の薄茶色になった地にボウっと白く描かれた屏風は正直ちょっと恐いです。それは図らずも光輝に満ちた白が、曖昧で半透明な白になったせいなのか、本来廃棄されるべきものが、存在し続けている事によるものなのか分かりませんが。 

 

 絵巻などを見ると、出産に際してはお産する人も介助する人も白い装束で、使用する調度品も白く塗られたものや、白木に白い図柄を描いたものが用意され、産所が白の世界で統一されていたのが分かります。

 穢れを祓うために撒く米を入れる押桶(おしおけ)、お産で出た胎盤など=胞衣(えな)を入れる胞衣桶(えなおけ)などがありました。

 胞衣桶を更に収める銅製のフタ付きの容器もあり、表面には線描で素晴らしい文様が施されていました。胞衣を大切なものとして扱う気持ちが伺えます。

 また、生まれた子供に産着を着せるとき、災厄が降りかからないように最初に天児(あまがつ)という人形に着せるそうで、幼い間はそうやって災厄を天児に移してから子供に着せるとのこと。天児は木の棒を十字にして天辺に丸く布をかぶせ目鼻を描いただけの簡単なものですが、意味深いものがあります。

 犬筥(いぬばこ)という雌雄対の犬型の張り子の置物(下部で2つに分かれ中にお守りなど入れる)は、寝た子の頭の左右に置かれます。天児、這子(はいこ:絹ではいはいをする子を形どった人形)同様に、子供の無事を願ったもの。胴体は犬、顔は幼子の顔となっていて、可愛いような不気味なようなという感じでした。

 驚いたのは、天児と犬筥が婚礼の大名行列の絵巻を見ると、ちゃんと特別な輿に乗せられて運ばれていることでした。天児は男性は成人すると神社に奉納され、女性は生涯傍らに置くそうです。

 誕生にまつわるものばかりを書いてしまいましたが、死や葬送にまつわる「白」というのもありました。

 全体に展示数は多くはありませんでしたが、文章や小説でしか知らなかった胞衣桶や振々(ぶりぶり)の実物が見られたり、私には大変興味深く、印象に残る企画展でした。

神奈川県立歴史博物館 「白絵 -祈りと寿ぎのかたち-」

 「白絵 -祈りと寿ぎのかたち-」” に対して1件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >きよぴーさん
    私もお会いできて嬉しかったです。植物画が繋ぐ縁で有難いものです。

    >この屏風を見て、こんな屏風があるんだと
    >しみじみと見入りました。
    私も初めて見た時は、こんな不思議な世界があるのかと思いました。
    屏風以外も興味深いものがありましたよね。私は犬筥の顔が面白いなぁと思いました。

    >白という色に込められた想いが、
    >静かに伝わってきました。
    そうですね。
    白は色でもあり光でもあるのだと思いました。

  2. きよぴー より:

    今日は思いがけずお会いでき嬉しかったです。

    ワインさんの展覧会に行く前に、この展覧会に立ち寄りました。
    四国で若冲をはじめ色彩の溢れる作品を見てきたばかりだったので、
    この屏風を見て、こんな屏風があるんだと
    しみじみと見入りました。

    白という色に込められた想いが、
    静かに伝わってきました。

  3. kyou2 より:

    >ワインさん
    >先日山種美術館で「金と銀」という展覧会を見ました。ここで、雲母と胡粉の質感の違いなどもよくわかりました。
    色々見ていらっしゃいますね。金と銀をどのように使い分けているのかも興味が湧いてきます。

    >白は邪気をはらう聖なる象徴なのですね。
    そのとおりですね。白とともに銀も使われていました。銀は金と違った清々しさがありますね。

  4. ワイン より:

    白絵屏風は一回限りで廃棄されるものだったのですか。そして、本来の姿は真っ白な紙の上にしろい画材をつかって描かれていたと言うことも驚きです。先日山種美術館で「金と銀」という展覧会を見ました。ここで、雲母と胡粉の質感の違いなどもよくわかりました。新しいうちは、本当に輝くように美しかったことでしょうね。白は邪気をはらう聖なる象徴なのですね。

この投稿はコメントできません。