『植物が地球を変えた!』
『植物が地球を変えた!』 葛西奈津子/著 日本植物生理学会/監修 (化学同人)
サイエンスライター各氏が、植物研究の様々な方面で活躍されている研究者を訪ね、その研究内容を分かりやすくまとめたシリーズ「植物まるかじり叢書」全5巻。本書はその第1巻。
専門的な内容もあって気軽に「まるかじり」という感じでもなかったが‥‥。
第1巻は「光合成」を中心に書かれている。何となく分かっていたつもりでいたことが、全然分かっていなかったり、そうだったのか!と改めて納得したりと興味が尽きなかった。
地球が誕生した46億年前、大気はほぼ100%二酸化炭素で、酸素はまったく存在しなかった。紫外線の影響の少ない海で最初の生物が生まれ、光合成をするバクテリアが生まれ、その中から酸素を発生するラン藻(シアノバクテリア)が生まれると、少しずつ大気に酸素が放出され始める。
光合成をするバクテリアやラン藻を体内に共生させた生物からは、光合成をする植物が生まれた。
大気中の酸素がどんどん増えると上空の酸素は紫外線のはたらきでオゾンになり、オゾン層がつくられる。オゾン層は紫外線を吸収するので地表に届くオゾンは激減、かくして生物は海から陸上へ進出することになった。
‥‥う~ん、なるほどタイトルの「植物が地球を変えた」とはこのことだ。
特に興味深かったのは、海中の植物プランクトンや藻類の役割だ。
植物というと身近な木々や草花を思い浮かべていたが、考えてみれば彼らは植物のごく一部なのだ。
地球の表面積の三分の二は海で、最近の見積もりでは、地球全体の光合成量の約三分の一から半分は海洋に由来している。それを担うのは、海洋の面積の数%にもならない大陸棚やさらに浅いところの海藻と、それ以外の圧倒的に広い外洋では単細胞の植物プランクトンだ。サンゴ礁は陸上の熱帯多雨林にもたとえられ、生産性は非常に高いけれど、サンゴ礁のある澄んだ砂地の海は実は栄養塩が少なく、サンゴの体内に共生している褐虫藻が光合成をしてサンゴに栄養を与えている。サンゴ礁の生態系も、藻類の光合成で支えられているのだ。 (p28)
植物プランクトンが光合成をして、食物連鎖が行われ、最終的にフンや死骸として海溝に有機物が沈み込むところまでを総合して、海が二酸化炭素を地球内部に吸収していることになり、これを「生物ポンプ」というのだそうだ。
温室効果ガスの削減問題で、海に二酸化炭素を吸収させようという試みもあると言う。
まったく知らないうちに、世の中では色々な研究がされているものだ。
光合成には欠かせない酵素ルビスコ、光合成の明反応と暗反応の詳しい説明は、私には難しく、化学記号や式など出てくるとかなりアブナイ。
まあ、しつこく読んでいればそのうち分かるかもしれない。