『人面瘡』
『人面瘡』 横溝正史 (角川文庫)
表題作のほか『睡れる花嫁』『湖泥』『蜃気楼島の情熱』『蝙蝠と蛞蝓』を収録。
いかにも時代を感じさせる文章がたまらない。定番のオドロオドロしさに加え、『蝙蝠と蛞蝓』(こうもりとなめくじ)では軽妙なユーモアがあって、これがなかなか楽しめた。
『人面瘡』
金田一耕助は難事件解決の骨休めにと旅の宿。ふと夜中に厠に立つと、偶然夢遊病の女を目にした。
数時間後、なんとその女が自殺未遂を起してしまう。
遺書には「今夜また由紀ちゃんを殺した。由紀ちゃんを殺したのはこれで二度目、由紀ちゃんの呪いが脇の下に現われて、自分を苛む‥‥」といったことが書かれていた。
彼女は本当に人殺しをしたのか、二度殺すとは? 呪いとは?
タイトルから想像するほどグロテスクな話ではなく、読後はどちらかといえばサッパリした感じか。
『蝙蝠と蛞蝓』
アパートに住むある男が、最近自分の嫌いな蝙蝠そっくりの男が隣に越してきたと愚痴をこぼす。
その蝙蝠男が他ならぬ金田一耕助というわけ。
一方、蛞蝓と嫌われるのは眼下に覗き見える部屋に住むお妾さん。
その女は最初は羽振りが良かったが、最近は自殺するの、しないのと「書置き」ばかり書いて、のろのろと動き回っている様子が蛞蝓そっくりなのだという。
男は手遊びに「蝙蝠と蛞蝓」なる小説を書きなぐってウサを晴らしていたが、ある日、その蛞蝓女が殺され、男は殺人の容疑で警察に連行されてしまった‥‥