『「かわいい」論』
『「かわいい」論』 四方田犬彦 (ちくま新書)
いつだったかテレビを見ていたら、レポーターの若い女性が何を見ても、何でもかんでも「かわいい♡」としか言わないので少々あきれた。この傾向は前々から感じていたのだが‥‥。
確かにかわいい系グッズの紹介コーナーだったけれど、他に言い様ってものもあるだろう。
‥ったく、ボキャ貧なんだから、とオバサン的感想を抱きつつ本書を読んだ。
すると、どうも「かわいい」は私が思う程単純な問題ではないようなのだ。
書かれている内容はというと、
マンガやアニメを通して世界を席巻する日本の「かわいい」
『枕草子』以来の「かわいい」の変遷。
「かわいい」とはどういうものか(小さく、幼げなもの、なつかしさ、子供らしさ)
「かわいい」と隣り合わせのグロテスク。
などなど多方面から考察していて面白い。特に、明治学院大学と秋田大学という対照的な環境にある大学生245人に行ったアンケートが興味深かった。
回答から今どきの「かわいい」が見えてくると共に、若い人と自分との違いも面白かった。
以下アンケートの設問と私の回答
問1 あなたが今もっているもの、身のまわりにあるもので、「かわいい」とよべるものをいくつかあげてください。
・小さな置物かな‥‥考えてみるとあまりかわいいものを持っていないような。
問2 あなたは過去に「かわいい」と呼ばれたことがありますか。それはどのような状況のあなただったのでしょうか。
・幼いころは言われたと思う。髪の毛が茶色くて(今は若干白がある)目が大きかったので。
問3 あなたは「かわいい」と人から呼ばれたいと思いますか。もしそうなら理由を教えてください。
・若いころはいざ知らず、現在はおこがましい。呼ばれたいとしてもせいぜい「かわいげがある」でしょうか‥‥
この歳になって「かわいい」と言われたら、「どういう意味で?」と問いたくなりますねぇ。
問4 「かわいい」の反対語は何だと思いますか。
・「醜い」「ごつい」「不細工」う~ん、何だろう。
問5 「かわいい」と「美しい」は、どこが違うと思いますか。
・「かわいい」は未熟で未完成な感じがする。そこに親密感とか何かが入る余地があるような気がする。
それに対して「美しい」は端正でそれ自体完結、完成した感じ。何ものかが入る余地が無く、だから時に冷厳な近寄りがたさがあるように思える。
問6 「きもかわ」とは何でしょうか。説明してください。
・気持ち悪いの「きもい」と「かわいい」を合体させた若者用語。
一見すると気持ち悪いけれど、よく見ると(慣れると?)そこも含めてかわいらしく感じられるものや、その感覚。
問7 最後に「かわいい」についていい残したことを、自由に書いてください。
・グロテスクなもの、恐ろしいものの中にさえ「かわいい」を見出そうとするのは、自己防衛ではないかとも思った。
苦手なものを自分の範疇に取り込み、違和感や不快感を少しでも緩和するようにコントロールしているようにも思える。
人は「かわいい」が持つ曖昧な優しさの中に、逃げ込もうとするものなのだろうか。「かわいい」に癒されるとはそういうことなのだろうかと思った。