曖昧な豊かさ

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昨日、コロー展をメインとしたコミュのイベントに参加させていただき、独りで行く展覧会とは一味違った楽しい一日を過ごすことが出来た。

「コロー 光と追憶の変奏曲」は、何と言っても今までになかった質と量を兼ね備えたコローの展覧会。加えて初日の昨日は記念講演があり、その聴講が大きな目的だった。

コローやバルビゾン派について予習をかねて図書館で何かないかと探したが、これが意外と無く、コローの魅力って何だろう? とあらためて考えてみると、どうもはっきりしない感じがあった。

今回、充実した作品を対面し講演を聴くことで、分かりそうで分からないコローの魅力を私なりに確認することがき、また新しい魅力を発見できたように思った。

講演は、ルーヴル美術館絵画部長で展覧会の監修者のヴァンサン・ポマレッド氏の「コロー:絵画における音楽的概念」が中心で、講演終了後に、三菱一号館美術館長で同じく監修者の高橋明也氏がも参加する形式だった。

ポマッド氏の講演は同時通訳で、今、メモを見ながら纏めても何となく断片的な事柄しか浮んでこない。自分の理解力のなさに辟易とするも処置無し。以下は自分のための備忘ということで不確かなものなので、あしからず。

コローが新古典主義、写実主義、ロマン主義、自然主義など、美術史の変遷の中にあって、それらを内包しつつ、それに囚われることなく独自の絵画を描いていたこと、後世の印象派やキュビスムの画家たちにも多大な影響を与えていたことなどが述べられた。

特に展覧会の副題に「光と追憶の変奏曲」とあるように、コローが繰り返し描いたヴィル・ダヴレーに彼の絵画の特徴が集約されていることが理解できた。

コローが創造した作品は、ヴィル・ダヴレーという主題に様々な装飾を付け加え、個々に美しい作品に仕上げるという「ヴィル・ダヴレー変奏曲(高橋氏の言葉)」とも言えるもので、それは自然を再構成し「想い出(スヴニール)」という一つのジャンルを作ることになったとのことだ。

また、コローのフレーミングについては、新たなフレーミングの発見、仕事をするためにはどの場所が良いか、座る場所を知っている資質、というような事も述べられていて、印象に残った。

聴講の前と後と2度展覧会の作品を鑑賞することになったが、やはり《モルトフォンテーヌの想い出》に代表される、グレーの色調の風景画の美しさは格別だった。

そこに描かれたのが現実にある風景かどうかという問題も忘れ、物語性や親和性を盛り込んだ歴史的風景画かどうかということも忘れて、ただ詩的な美しさ、木々が画面にリズムを与え、微妙な色調が穏やかで豊かな感情を沸き立たせるのに陶然とする思いだった。

また、繰り返し描かれるヴィル・ダヴレーという場所を得たコローは何と幸せな画家だろう、と思った。

考えてみるとセント・ヴィクトワール山を描き続けたセザンヌ、タヒチのゴーギャン、高島野十郎の蝋燭、若冲の鶏もそうかもしれないが、生涯付き合えるモチーフを見出した画家は幸福なのではないかと感じた。

《真珠の女》は正にモナリザ、コローにとっての理想の女性像という感じだった。ただ、照明が反射して髪の毛の部分が光ってちょっと見えにくかったような‥目が悪くなったのかしら。

どちらかというと繊細で詩情豊かな風景画に比べて、人物画はとてもどっしりとした感触が伝わってくるようで、その意味で《青い服の夫人》は素晴らしく、私はこちらの方が好きかな。

人物画は(特に《ミューズ 歴史》)量感があって、どの人物像も普遍的な塊と感じられて、ピカソの量感のある人物像が直ぐに浮かび、コローがキュビスムの画家に与えたインスピレーションの大きさが感じられた。

今回の展示では、コローの作品に混ざって、要所要所に影響を受けた後世の画家の作品が展示され、変化のある新鮮な驚きがあった。

曖昧なグレーの靄の中に、豊かな絵画の実りが沢山含まれているのを感じた展覧会だった。

当日の日程は、「コロー展」鑑賞 → 昼食:国立博物館内の「ホテルオークラ ガーデンテラス」→ 博物館にてオークションで話題となった《大日如来坐像》鑑賞 → 黒田記念館 → 記念講演聴講 → 「コロー展」鑑賞。

黒田記念館は博物館のすぐそば、黒田清輝の《湖畔》などが展示されているところ。いつも近くを通っていたのに訪れたことが無かったので、よい機会を与えられた感じ。

《大日如来坐像》や黒田記念館などは、色々なことにお詳しいわん太夫さんが案内してくださって、興味深く見ることが出来ました。ありがとうございました。

また、このイベントの主催者であるjuliaさんには昼食の間に素敵なハーブ石鹸までお土産にいただきました。

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楽しくランチもいただけて、いつもは独りで何となく昼食を済ませる私ですが、皆様と優雅なひとときを過ごさせてもらいました。本当にお世話になり、ありがとうございました。

「コロー 光と追憶の変奏曲」

http://www.corot2008.jp/index.html

東京国立博物館 《大日如来坐像》

http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=5309

「黒田記念館」

http://www.tobunken.go.jp/kuroda/

「Floral Herbs」 juliaさんの新しいサイト。透明石鹸の作り方などが紹介されています。

http://www.floralmusee.com/loral_herbs/