惹かれる、憑かれる

心憑かれて (創元推理文庫)

『心憑かれて』 マーガレット・ミラー/著  汀一弘/訳 (創元推理文庫)

チャーリー・ガウアンは、保護監察官に注意されているにも拘らず、子供たちの姿を見ることが止められない32歳の男性。

彼はとりわけ9歳の女の子、ジェシーがお気に入り。今、どうにかしてジェシーの住所を突き止めたいと思っているところだ‥‥。

別にネタバレということでもないが、本書には残酷な描写やおぞましい内容は出てこない。

精神異常のレッテルを貼られた人間と、個々に問題を抱えた家庭との接点が次第に繋がれていき、ラストへと雪崩れ込むというもの。

チャーリーを生涯引き受けなければならない兄の苦悩。空回りしているように見えるチャーリーの恋人の存在。

ジェシーの友達、メアリー・マーサの家庭では両親が別居中。おまけに母親のケイトはかなり常軌を逸した精神の持ち主だ。

さらにジェシーのお隣のアーリントン家でも夫婦は不仲。原因の一つは妻のヴァージニアが、他人の子であるジェシーを盲目的に可愛がっていることだ‥‥。

不幸にもあちこちで、愛が間違った方向に注がれているように見える。

心惹かれるのは自分があるけれど、心憑かれると、自分が自分で無くなる。その境目はどこにあるのだろう。

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