エンターテイメント2作品

チルドレン

『チルドレン』 伊坂幸太郎 (講談社)

「短編集のふりをした長編小説です。」とは著者の弁。

家裁調査官の陣内を中心に、友人の鴨居、同じく家裁調査官の武藤、銀行強盗が縁で知り合った盲目の永瀬、その恋人優子、盲導犬のベス。この5人と1匹が織り成すハートウォーミングな5つの物語が連なる。

全編を通して、型破りな陣内の正義感に他の登場人物も読者も翻弄される。しかし何事も結果オーライで胸にジ~ンときたり、苦笑したり。

目玉は何といっても陣内のキャラ設定。屁理屈屋で、強引で、自分勝手。しかも中年ロッカー(割とカッコいいらしい)、手癖も悪い。

要するに品行方正でない彼が、正義を追求していくので、読者もハードルが低い。人格者が分かりきった正論を吐いても、ハイ、仰せのとおり、ごもっとも。で、終わる。

銀行強盗、万引き少年、不倫など、遭遇する悲喜劇も、破天荒な陣内をぶつけることで、軽快さと自由な空気を生んでいる。ちょっと熱すぎるがガマンガマン。

有り得ないキャラに親近感とリアリティを感じるのが、今どきじゃないかと思ったり。

多分、盲目で知的、さり気なく鋭い「永瀬」が、女性読者には一番人気だと思うけど。‥‥ン、私の好みかな。

やや都合の良い偶然も、「奇跡」がキーワードなのだからしょうがない。

読み心地軽やかなエンターテイメント作品で、安心して楽しめる本。

死神の精度

『死神の精度』 伊坂幸太郎 (文芸春秋)

主人公は一人の死神‥‥彼らは担当の人間が決まると、その人間に接触をはじめる。

私たちは一週間の調査を終えると、担当部署に結果の報告を行う。その結果が「可」である場合、いや、大半は「可」であるのだが、その翌日、つまり八日目に「死」が実行される。ようするに私たちはその実行を見届けて、仕事を終了したことになるのだ。 (p22)

つまり死神は、人生の最後の一週間、さり気なく登場人物として入り込むのだ。

このシステムが面白くて読ませる。

また、彼らは担当した人間がどのような死に方をするかは知らないし、自殺や病死には無関係とのことだ。さらに彼らは仕事の合間に時間ができると、CDショップで視聴することが多いらしい!‥ナント慎ましい。

『チルドレン』と同じく短編仕様の長編。私は『死神の精度』の方が好きかな。

私には、6話続きの最後で辻褄よく纏まりすぎてしまった感じがした。そこが面白いと言う人もいるだろうけれど。

死を扱っていても、死の重みを全く感じないのは、死神という視点で死を見ているからだろう。

死の重さも軽さも人間が感じるもので、死神には関係ない。

とは言ってもこの死神、飄々とした(当たり前か)中にもウイットがあり、そこはかとなく優しさがある。そこにこの小説の良さがあるように思った。

因みに、死神は「可」でなく「見送り」と報告することもある。

今まで、自分の周りにフト現れて、一週間ほどでいなくなった人がいるとしたら、

幸運にも死神に会えたことなのかもしれない‥‥。

未読作家だった伊坂幸太郎を教えてくださったマイミクのzさん、有難うございました。