先ずは空の下へ
『いきいき水彩画 10』 日貿出版社/編
私は風景画をあまり描いたことがない。出不精だったり、花と違って風景は大きくて、気後れしたりで。
それが思うところあって、このごろ風景を描きたいなと思うようになった。
そこで購入したのが、友人のYadayooさんの作品が掲載されている水彩画の専門誌。
以前から気になっていたが、どうも自分に風景を描く気持ちが沸いてこないのに読むのもなぁ、などと不義理にも躊躇していた。
早速Yadayooさんの「中央アルプス山麓の風景」を探した。
以前からHPやブログを拝見して、作品の美しさと文章の味わい深さには感服していたが、こうやって特集にまとめられてみると、改めてYadayooさんのもの考え方、風景の見方、とりわけこの地に対する思いがよく分かる。
作品は、紙面を通しても色の幅の広さに驚かされる。洗練された色調もとても魅力的だ。
手前に水平方向の広がりがあり、視線が奥へと引き込まれる構図の絵は、気持ちのバランスが整えられそうな安定感がある。
どの作品も心地よい調和で満たされ、それが作品に静かな力強さを与えているように思える。
小説好きな私がふと気になったところ
惹きつけられる絵とは、見る人が描かれた風景のその中を、歩きあるいは旅をする体験を味わえるものではないか、そんな気がしています。 (p34)
ここは、惹きつけられる小説とは、読む人が‥と置き換えても読めるなぁと感じた。そう考えると私には何となく風景画が身近なものに感じられた。
また、「その色、失敗ですか?」という一文は考えさせられるものがあった。
濁った色を単純に汚いから失敗と思ってはいけない、というような内容が書かれている。
私も植物画を描いていて思うのは自然の色の美しさと幅だ。しかも自然の個々の色はけして濁ってはいない。どの色も色であって濁った色ではない。
濁った色と感じるのは、紙面上の相対的な色の組み合わせによって感じるだけではないだろうか、などと頭を捻る。ほんと色は難しい。
本誌はYadayooさんのほかにも数名の方が掲載されている。それぞれ個性のある水彩画で興味深く、構図や技法の解説も勉強になった。
また風景を探しての山歩きや旅の仕方など、これを手立てにちょっと出かけてみたくなったり‥。
絵を描くことの楽しさや、苦労しながらも追求する喜びを再認識させてくれた一冊だった。
Yadayooさんの作品はHPで見られます。
“先ずは空の下へ” に対して4件のコメントがあります。
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>みちこさん
お母様がおっしゃったのは、きっと固定観念で色が使われると絵がつまらなくなってしまうからかもしれませんね。
色を混ぜ合わせることで、心の感じも分かるような気がします。
「見る人が犬を飼いたくなってしまう」‥そうですね。私もあのデッサン好きです。
同じ素描でも、裸婦デッサンは勉強のためという感じがして、線の表情が全く違いますね。
風景画にも興味が湧かれたのことで、今後はそんな絵も見られるものと楽しみにしています。外に出かけるので、健康にも良さそうですね。
色に関しては、私の母が孫に水彩画を描かせるときに、「ちょっとそこは汚い色にしてごらん」などと良く言っています。
yadayooさんの絵で私が特に好きなのは、愛犬のココちゃんの素描。やはり、愛情が感じられますよね。「見る人が描かれた風景の中を・・」みたいに、「見る人が犬を飼いたくなってしまう」絵ですよね。
>Yadayooさん
たぶん私に、見当違いや思慮が及ばないところがあると思うのですが、
好意的に受け取っていただけて安心しました。
こちらこそ、よろしくお付き合いください。
取り上げていただいてありがとうございます。
心をこめた批評の言葉に気持ちがあたたまりました。
今、静かなひと時を過ごさせていただいております。
これからもよろしくお付き合いください。