映画と本
「ダ・ヴィンチ・コード」を観てきた。
小説はだいぶ前に読んだので細かいところは忘れてしまっていたが、映画を見て追々思い出した。
なんと言うかこの映画は、あの『ダ・ヴィンチ・コード』映画化した。ということが一番のウリなんじゃないかな。
原作のイメージの具現化とストーリーの簡略化で、映画の方が内容が分りやすいように思った。
原作が物議を醸し出しているのは、著者のダン・ブラウンが、事実(史実)とフィクションを同等に扱ってしまっていることだと思う。
けれど、映画化されてスクリーンを通してみる限りでは、それほど真実味があるとは思えず、もし映画だけであればこれほど話題にならなかったのでは?とも思った。
「活字の力」はバカにならないとつくづく思う。
活字になると単なる空想も、それが真実であるかのような魔力がある。
この場合は、著者の書き方に問題があることは確かだと思うが…。
配役で一番良かったのは老富豪サー・リー・ティービング役のイアン・マッケラン。
博識で品があって、しかも過激なティービングは抜群の存在感。権謀術数、知力財力フル活用で、見ていて一番素敵だった。
映画はあまり見ないの気がつかなかったが、パンフを読んだら「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフじゃない。さすがに魅力的な訳だ。
レオナルドといえば、去年、森美術館でレスター手稿が公開されたばかりだ。
その手稿は、超人的な観察と思考の記録。
人類が紙の上に残した文字や絵で、あれほど美しいものも少ないだろう。
天文学、解剖学、博物学、土木建築…そのエッセンスが注ぎ込まれた絵画。
一体、レオナルドとはどんな人物であったのか?
『ダ・ヴィンチ・コード』を観る前に一冊の本を読んだ。
『ダ・ヴィンチの遺言』 池上英洋 (KAWADE夢新書)
万能の天才と称されるレオナルドが、ルネサンスという時代に、一人の人間として如何に生まれ、生活していたかが、実に淡々と且つ生き生きと書かれている。
手稿を見たときも、この本を読んだ時も同じ、「天才は一日にして成らず」と感じた。
地道な観察や試行錯誤の連続、挫折あり不遇あり悲哀ありの人生は、天才というより実に人間臭い努力の人であるという印象を持った。
さらに、著者は美術史研究者として『ダ・ヴィンチ・コード』の記述内容について、「真偽」を明らかにしている。
またカトリックにおける「女性」のイメージ、グノーシス主義などについての解説は、大変興味深く役に立った。
“映画と本” に対して1件のコメントがあります。
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>ikeさん
一読者のところまでわざわざ来てくださって、本当にありがとうございます。
拙いブログで、勝手なことを書いており、恥ずかしい限りです。
こちらこそまた、貴ブログを読ませていただき、色々勉強していきたいと思っております。
採り上げていただいてありがとうございました。Blogへのコメントも感謝です。
ユダの福音書も話題になっていますね。原文は短いものなので情報量はさほど多くないのですが、今後議論されていくことになるでしょう。
また来ますね。
>Yadayooさん
ちょっと読んでみたいですね~。次々と読みたい本が出て来てキリがないです。
世の中、知りたいこと(知らないこと)沢山ありすぎ!
なのに、この頃寄る年波?読んでいるとすぐ眠くなりますよ(泣
書店で、もうすでに2冊もユダの福音書を扱う書物が並べられていました。
読みかじりですが、ユダはもっとも深くイエスの教えを理解していた高弟で、
裏切り役を担うように命じられたという内容のようですね。
>Yadayooさん
>それも意図的に歪曲されたらしいとわかり、
>キリスト教の概念が自分の中ですこし変わりました。
権威になったキリスト教が、色々な箇所で意図的な解釈をしてきたことは否めませんよね。
どの宗教でも、権力と結びつくと問題が起きるのは同じみたいですが・・・
宗教や神話にかこつけて、色っぽい絵を描くのは常套手段だったりしますよね。
>ユダの福音書が解読されたニュースが先日ありましたが、・・
そうですね!私もこれ注目していました。ユダの汚名返上あるのでしょうかね。
先日はコメントありがとうございました。
ダヴィンチにもキリスト教にも興味ありますが、私の場合、
映画ダヴィンチ・コードで扱われる謎を解説したTV番組を
先日見たくらいです。話題についていけない自分がいますね(笑)。
以前マグタラのマリアについて書かれたものを読んだことがありますが、
このときの驚きが結構大きかったです。
娼婦に身を落としていたマグダラのマリアが
イエスとの劇的な出逢いにより改心して、生涯教えを守り抜くという姿が、強いイメージとして焼きついていました。
でも、これには後世の作り話がずいぶん入っていて、
それも意図的に歪曲されたらしいとわかり、
キリスト教の概念が自分の中ですこし変わりました。
娼婦ではなかったらしいこと、多少肌を出して放心したような姿を描いた絵画はそのような意図の作り物であること、パウロの系統の教団とマリアの系統の教団が対立関係にあり、どちらかというとマリアの教えがよりイエスに近く、そのことからパウロ一派に駆逐された、ということなどです。
ユダの福音書が解読されたニュースが先日ありましたが、
この内容も、これまでとはかなり違った話を伝えているようですね。
>ワインさん
やっぱり、ルーヴルやダ・ヴィンチがどう映像化されるのか、興味があって観てしまいました。
すっかり乗せられているわけです(笑
>キリスト教世界自体が揺れるほどの内容なのか?
私より、ワインさんの方がキリスト教には詳しいと思いますが、たしか立派な神父さんもご存知だし・・・。
私は無宗教の一般的な日本人で、『ダ・ヴィンチ・コード』も最初からフィクションとしてしか読みませんでした。
以下ネタバレになりますが・・・
小説のキモは、キリストとマグダラのマリアは婚姻関係にあり、子供がいてその子孫をシオン修道会が現在も守り続けている。
歴代総長の一人であるダ・ヴィンチは「最後の晩餐」の中にそれを描いていた。
現代のルーブル館長の殺人事件が発端となって、一連のカラクリが解きあかされることになった。・・・というような内容です。
問題は、話の中で歴史的事実とフィクションが同等に扱われているので、非常に誤解を生みやすいということです。
それで、キリスト教社会の中に拒否反応が出ているのだと思います。
> 私にはどうも、一時的なブームにすぎないのではないかと思えるのです。
そうだと思います。 あまりベストセラーは読まないほうなのですが、「ダ・ヴィンチ」の魅力に惹かれましたね。
以前、『ダヴィンチ・コード』を読まれて、期待していたほどの内容ではなかったとkyouさんか書かれていませんでしたっけ?
私は本も読んでいないし映画もみていないので、なんとも言えませんが、どうしてそれほど大きな反響を生んだのでしょうねおう?しょせんは小説(フィクション)なのに、kyouさんのおっしゃるように、あたかも事実であるかのような書き方をしたところに問題がある?それとも、キリスト教世界自体が揺れるほどの内容なのか?
私にはどうも、一時的なブームにすぎないのではないかと思えるのです。大体、ベストセラーというのはそういうものですし、真実というものは長い時間によっとおのずと選別されるものですものね。
>みちこさん
今では、ネットもあるし本も色々出ていますが、西洋の黒魔術とかオカルトとかそういうものを、早い段階に一般に紹介したのが澁澤じゃないかな。
実は懐かしさから、グノーシスとか、フリーメイソンとかでている『秘密結社の手帖』をつらつら眺めました。
内容は専門的なものではなく、エッセイといった感じです。
>エッセネ派の食事
食事は生きる基本だから、主義によって色々あるのでしょうね。
私はあまりこだわりはないのですが、自分にあった食事を探すのは難しいことですね。
母親として子供にちゃんとした食事を出すことは基本だけど、大変な仕事ですよね。
『ダ・ヴィンチの遺言』は新書で文体も読みやすかったです。
グノーシスについての記述は多くはありませんが、簡潔に纏められていて、助かりました。
こんばんわ。
『著者が事実とフィクションを同等に扱ってしまっている』本当にそうですね。でも、上手い役者がいて楽しめたようですね。
グノーシス主義について何か読んでみようかと思ったら、膨大な数が検索出来ちゃいました。。。多くの人の興味を引く問題なんでしょう。kyouさんのお好きな澁澤龍彦さんも、これについて本を書いているんですね。
わたしは、グノーシス主義と関係の深いエッセネ派の食事のほうに興味がありまして、ナチュラルハイジーンというスタイルが、それに近いということを知りましたので、今、トライしている最中です。もっとも、全部ではなくて、一日一食ぐらい。加熱無し。塩分無しなので、一日試してみたら、慣れないせいか、貧血起こしてしまいました。だもんで、一日一食ぐらいです。エッセネ派の清廉潔白な生き方は、穢れた身には無理。。。
『ダ・ヴィンチの遺言』今、図書館に予約しました。kyouさんの感想文は簡潔明瞭。読みたいか読みたくないか、すぐに決められてとても便利です。これからもたくさん書いてくださいね。