応天門炎上
先週、開館40周年記念「出光美術館名品展Ⅰ」と、こちらも50周年記念ブリジストン美術館の「雪舟からポロックまで」を見てきた。
今回の第一目的は出光で国宝「伴大納言絵巻」を見ること。
目の当たりにすると想像以上に素晴らしい作品で、絵巻物の魅力に益々はまってしまった。
この絵巻は史実(応天門の変)を元にした物語で、大内裏の応天門炎上と時の権力者(清和天皇、太政大臣藤原良房、左大臣源信、大納言伴善男)の争いが絡んだ事件。
物語では、伴善男が源信を陥れる為に放火、罪を着せるも上手くいかず、結局真相がバレて自分が捕らえられるという、伴大納言の野望と挫折の形になっている。
展示されている絵巻の場面は、激しく燃えさかる応天門を挟んで、右側に朱雀大路から続く朱雀門から入ってきた庶民や公卿や検非違使その他何だか分らない野次馬、左側は応天門のさらに奥の会昌門から出てきた殿上人や使用人と大きく二つに分かれている。
右側は風下にもあたり火の粉、黒煙が激しくおそい野次馬も切迫感がありパニック度が高い。
一方左側は風上で集まってきた人も興奮しているが、どこか楽しんでいる風で、危機感はあまり感じられない。
兎に角、一人一人が違った表情をしていることに本当に驚く。
誇張的な表現でなく自然な驚き、自然な恐怖、この場に現代人がいてもたぶん同じ表情をするだろう。
この絵師は一体どうやってこの絵を描いたのだろう?何かこういう現場にでも出くわしてそれをスケッチしたのだろうか?そのくらい臨場感のある描写だ。
燃えさかる炎の赤と黒煙のコントラストも力強く、黒煙の濃淡が煙のモクモクとした厚みを感じさせる。
また、人々が被る色々な形をした烏帽子の黒がとても印象的だ。
それは線描で描かれた手足や顔と比べ、様々な形と方向もって塗りこめられていて、画面から鮮やかに浮かび、その黒を目で追うだけでも実に動きがあって面白かった。
別の絵巻物で「白描中殿御会図」があったが、「伴大納言」に比べるとカスンだな~。
何人もの貴人が殿中に集まっている図で、それぞれ名前が書かれていた。
名前のそばに四十五とか三十七とかいう数字が書かれていたが、歳なのかな?20代はあまり無かったと思うが。
あとよかったのは国宝 古筆手鑑「見努世友(みぬよのとも)」
歴代(奈良~室町時代)の代表的な断簡を集めたもので、正に文化が凝縮されて収まっている感じ。こんなに凄いものがあるなんて知らなかった。
平日であったせいか、空いていたのでゆっくりと鑑賞でき大満足。
前後期で入れ替えがあり、後期の作品も「当麻曼荼羅図」「北野天神絵巻」「一休の書」等々出来れば見たい作品ばかり。また足を運んでみようかな。
ブリジストン美術館の「雪舟からポロックまで」の感想は、そのうち・・・。
「出光美術館」
“応天門炎上” に対して1件のコメントがあります。
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とても迫力がありそうですね。平安時代の作品ですよね。
その放火事件は、たしか、『陰陽師』にも出てきたと思うんですが。とても、不気味な事件で、怨念のような、強い恨みが動機になっていたような。よく覚えていなくて悪いんですが。
その、国宝の手鏡は、そんなに凄いんですか。文章が書かれているの?見にいけなくて残念です。
ブリジストンの感想、楽しみにしていますね。