描かれた植物
先週、ずっと期待していた「植物画世界の至宝展」を見に行ってきた。
兎に角ひたすら見た。見て、感じて、考えての作業がフル回転した感じだった。
16世紀から現代に至るまでの植物画を、誕生、黄金時代、ジャンル確立期、衰退期、現代の5つに分けて展示、作品は全て英国王立園芸協会(RHS)リンドリー・ライブラリーによるものだ。
植物画がどのように植物学に貢献してきたのか、また写真発明以降から現代では、新しい意味と価値が見い出されていることを実感できる。
一つの植物を見て、そこから得られる情報を紙の上に正確に表す。必要に応じて緻密に描いたり、簡略化して描いたり、解剖図だったり、異時同図法がお得意だったり、写真には出来ないフレキシブルな目を人間は持っている。
そしてなにより、人間の手で描かれた植物の美しいこと!
一枚の紙の上に、コツコツと筆の跡が残る。何と誠実な美しさだろう!
現在では本来的な意味の植物画と、作品自体に価値をもつ植物画とに別れているように思える。
しかしどちらも、そこには花しかない。面倒な人生も、苦悩も描かれていない・・。
ウィリアム・フッカー、オーガスタ・イネス・ウィザーズの描く果実は奇蹟のように美しいと思う。
自然はこんなにも美しいものを作ったのか、と、逆に自然をかけがえのないものと感じた。
初めて知ったロシアのアレクサンドル・ヴィアズメンスキーの作品はユニークだった。
キノコに枯葉や芥が一緒に描かれていて、人工的な臨場感があった。
引っこ抜いたキノコを無造作にビニール袋に入れ、家へ帰って中身を開けたら、こんなものまで入ってました。と言うような感じ。
これだけの質と量の作品を見たのは初めて。中身の濃い展覧会だった。
偶然にも、座右の書『フローラ逍遙』の装丁に使われている作品の原画も見ることができて、感激もひとしおだった。
「植物画世界の至宝展」
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm#botanical
“描かれた植物” に対して1件のコメントがあります。
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はじめまして、お邪魔します。
私もキノコの絵におもわず惹かれてしまった者です。
キノコはどこか惹かれるモチーフなんですが、あの絵はまたなんともいえない感じで観ていました。
>キノコに枯葉や芥が一緒に描かれていて、人工的な臨場感が
kyouさんのこのコメントを読んで納得です。
イギリスにいても滅多に観られないものだそうでとても貴重な展示でした。澁澤龍彦さんの『フローラ逍遙』は本当に大好きな一冊です!