「最後の審判図」考
『天国と地獄 キリスト教からよむ世界の終焉』 神原正明 (講談社選書メチエ191)
「最後の審判」というと、システィナ礼拝堂のミケランジェロがあまりに有名だ。
ちょうど法王の死去に伴う一連のテレビ報道で、画面にチラッと映ったときは、思わずハッとした。
この世の終わりが来る。その時にもう一度キリストが戻って(再臨)今まで生まれ死んだ全ての人間の魂を裁き、天国に行く者と地獄に堕ちる者とを分ける。
本書では、終末思想、ミレニアム、楽園幻想、「最後の審判」の図像学(基本的な約束事)と個別の作品について考察されている。
読み解いていく「最後の審判」は、
ジョット・シニョレッリ、ミケランジェロ・・イタリア
ファン・デル・ワイデン、メムリンク、ボス・・ロマネスクから北方
もう一つ、最近気になっていた言葉「アンチクリスト」についても一章があり、興味深く読んだ。
アンチクリストの「アンチ」はアンティパスタ(前菜)と同じく、前(ante)意味と反(anti)の二重の意味があるという。
キリストの再臨に先立ち、現れる「偽キリスト・反キリスト」のことだ。
キリストの再臨がいつあるか分からない以上、常にアンチクリストの恐怖があることになる・・。
アンチクリストの烙印を押された者は、それぞれの時代に存在する。ローマのネロ、ルネサンスに現れたサヴォナローラ、ユダヤ人等々。
バリエーションは豊富だ。中でもキリストに似て惑わすというパターンは不気味だ。絵画上でも、容貌が似ていたり、一見して分からなかったり、といった表現がなされていることがあるという。
「アンチクリスト」は終末思想の一要因として、人間の不安の具現として興味深い現象だと思う・・。
最終章で、ヒエロニスム・ボスの「快楽の園」が取り上げられていた。
もう20年も前のことだが、プラド美術館で「快楽の園」を見た。
余りに何気なく展示されていたように記憶する。
その時はあまり知識もなく見てしまった。あぁ、今もう一度見たいものだ。
“「最後の審判図」考” に対して1件のコメントがあります。
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これおもしろそうですね。私も読んでみよう!