エジプト美術讃
先週、上野に「ベルリンの至宝展」「ラ・トゥール展」を見に行った。
平日だったので思ったより空いていて、じっくり鑑賞することが出来た。
「ベルリンの至宝展」東京国立博物館
ベルリン国立博物館群はシュプレー川中洲にあり、博物館島と呼ばれ世界遺産にも登録されているそうだ。今回はそれぞれ特徴のある博物館から、バラエティに富んだ美術作品が紹介されている。
主なものだけでも、エジプト美術、古代西アジア美術、ギリシア・ローマ美術、イスラム美術、ビザンチン美術、ルネサンス~近代美術があり、これが博物館島のコレクションのほんの一部であるということを考えると、その規模の大きさにあらためて驚く。
私自身は、ボッティチェリの「ヴィーナス」狙いで、それは予想に違わず美しかったけれど、それ以上に、今まであまり関心の無かったエジプト美術に魅了された。
青銅で作られた動物や、動物の頭を持つ神々は、様式化され洗練されたフォルムが力強く、聖なる動物の神秘的な気高さを感じた。
また、「神殿の浮彫断片:捕虜の進行」と題されたレリーフはごくごく浅い浮き彫りで、繊細な手仕事の緊張感が素晴らしかった。ちょっと手で触りたくなるほどの美しいテクスチュアだった。
美しいと言えば、これほどの美人に出会えて良かったと思ったのが、「ネフェルティティ王妃あるいは王女頭部」
高さ30㎝ほどの、珪岩という薄茶色の石で作られたものだ。表面の研磨がされていない状態だが、それがかえって自然な肌合いに感じられ、神々しい中にも人間らしさが感じられた。
兎に角、気品に満ち溢れた美人。どの角度から見ても完璧に美しかったが、特に額からすんなりと高い鼻、引き締まった唇、細い顎、しなやかで長い首のプロフィールにはうっとりだ。
この美しさは、権力だ。と思わざるを得ないなぁ・・。
何千年という単位で変化しない様式を持つエジプト美術、不変であることに意味がある。神と王の神格化を民に知らしめる為の壮大な表象だ。
カラバッジョの激烈さを引き、オランダ絵画の素朴な親密さを足したような感じを受けた。
蝋燭の炎のロマンチックな静けさは、独自の型が確立していて忘れがたい印象を与える。
ラ・トゥールの生きたバロックは、群雄割拠だ。
イタリアにはカラバッジョとその多大な影響、フランドルにはルーベンス、オランダにはレンブラント、フランスにはプッサンとベルサイユ宮殿。そしてフランスは軽佻浮薄なロココへと流れていく。ラ・トゥールの作品は明らかにその本流外に思える。
太陽王のベルサイユ宮殿の前に、ラ・トゥールの炎はあまりにも儚く、闇の中に忘れられていたのだろうか・・。
“エジプト美術讃 ” に対して2件のコメントがあります。
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こんばんは、deguchiです。
ベルリン国立博物館は「ネフェルティティ王妃」を今回の作品以外にも
コレクションをしていたと思いますが、私も一番印象的でした。
イギリスに行ったとき、「イギリス人って持ってきたものを研究して、
分類分けして、きれいに展示することがイタリア人やフランス人より、
ずっと上手だなあ…」と思ったのですが、
今回の「ベルリンの至宝展」を見て、ドイツ人の場合はどうなのか、
確かめてみたくなりました。
ラ・トゥールの魅力は、確かにその「本流外の部分」ですね。
いい意味でフランスっぽくない、カラバッジョの洗礼を受けていても、
イタリア的ではないし、オランダっぽくもない…。
蝋燭の炎で主題のみが照らされ、あとは闇に隠されたというか、
明確にすることをあえて避けたような部分に私も惹かれます。
私もこのGW中にこのふたつにいきたいなーと考えています!
でも他にも行きたい展覧会がいつもあって困っています(^^;