虫を愛し、虫を描く!

情熱の女流「昆虫画家」―メーリアン波乱万丈の生涯

『情熱の女流「昆虫画家」-メーリアン波乱万丈の生涯』 中野京子 (講談社)

マリア・シビラ・メーリアン(1647~1717)の作品の特徴は、生命力と大胆さにあるように思う。

それは自らの人生においても、そうであったことを思い起こさせる。

子連れの離婚、コミューンでの隠遁生活、南米のジャングルへの旅・・

1699年彼女は、周囲の反対を押し切って52歳という年齢で二人の娘を連れ、南米スリナムに渡る。

現地での昆虫の採集やスケッチにあけくれ、マラリアに倒れながらも2年後にアムステルダムに生還、そして1705年、最高傑作の銅版画集『スリナム産昆虫の変態』を出版した。

メーリアンは、何より昆虫のメタモルフォーゼに惹かれた。

イモムシが蛹になり、羽化して飛び立つ。その劇的な変貌に驚嘆し、どれ一つ見逃すまいと一枚の羊皮紙に描き込む。

彼らのエサとなる植物(もちろんこの描写も素晴らしい!)に、全ての段階が集まり不思議な時間と空間が出現する。さらに各々の大きさは恣意的で、一種シュールな世界を創り出している。

作品から、彼女は解剖学的な興味よりも、生き生きとした昆虫の生態にこそ、驚嘆と神秘を感じていたように思う。その思いの強さが、表現の強さ、正確さになっていることが素晴らしい。

彼女は、自分で人生を切り開いていった。

女性であったが為の理不尽があった。しかし、女性であったが為の自由もあったと思う。

結局、何かへ打ち込むエネルギーの大きさに、男も女もないということだ。

思い通りにいかない時、彼女がよく口にしていた言葉「待つのが良薬」

-強かな意志を感じた。

『スリナム産昆虫の変態』