[展覧会] トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで
東京・丸の内の三菱一号美術館で開催中の「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」を観てきました。
明治になると浮世絵も変化し、文明開化の様子を伝える横浜絵や浮世絵新聞など様々なジャンルの浮世絵が生まれました。中でも「光線画」と呼ばれる作品は西洋の写真技術や遠近法を取り入れ、光と影を際立たせて空間と対象を描くものです。小林清親や井上安治の作品は江戸情緒を残しつつ、時代の過渡期を鮮やかに描き出しています。
また、同時代の鶏卵紙に手彩色をほどこした写真が一緒に展示されているのも興味深い点でした。彩色には木版画工房で訓練を受けた絵師が携わっていたそうです。
細部まで写すことが可能な写真に比べると、情報伝達という意味での錦絵が写真に移り変わったのも納得できます。しかし、多色刷木版画という高度な技術から生み出される清親や安治の独特な世界は、何ものにも代えがたい魅力があると感じました。
さらに明治末期になると絵師、彫師、摺師による分業は従来ながら「新版画」と呼ばれる、より芸術性を重視した作品が生まれます。展示では海外作家の作品を版画にしたものや、西洋絵画の技法を取り入れるなど明るく明快で、水彩画を思わせる表現に、新鮮な息吹を感じました。
特に印象に残ったのは、吉田博の私家版《瀬戸内海集 帆船 朝》です。瀬戸内海集は、同じ版木を使って朝、夜、午前、午後、霧、夕の6点が制作されたそうです。正に版画の良さを目の当たりにするような作品で、同じ版木でこれほど異なる作品が生み出されるのかと驚きました。摺りにはバレンの跡を残す「ざら摺り」という方法が用いられていると説明されていました。
同じく川瀬巴水の作品も日本の豊かな自然を描いた風景版画です。シンプルで味わい深い作品は海外でも高く評価されており、コレクターにアップルのスティーブ・ジョブズがいることはよく知られています。
今回の展示作品は、スミソニアン国立アジア美術館のミュラーコレクションによるものですが、国立国会図書館のサイトの中に「川瀬巴水の風景版画」というページもあります。ご興味のある方はご覧ください。
新版画というジャンルをあまり意識したことはありませんでしたが、振り返ってみると過去に小原古邨やポール・ジャクレーといった新版画を手掛けた作家の展覧会を見ていました。自分の趣味趣向はあまり変わっていないのだなぁと改めて思いました。







