[展覧会] 細密画で旅するトルコ展
関内の横浜ユーラシア文化館で開催中の「細密画で旅するトルコ―友好と文化が照らす外交百周年」を見てきました。
トルコの細密画は17Cのオスマン帝国の時代に最盛期をむかえ、宮殿の工房の画家たちは歴史的な出来事や宮廷の儀式、日常生活や自然の美しさなどを描いていたそうです。本展はその伝統を受け継いだ現代トルコの細密画家による作品の展示です。
展覧会の説明文にはトルコの細密画の特徴は、遠近法が用いられていないとありました。端的に言えば線遠近法が用いられていないということでしょうか。作品は紙に描かれていて、紙自体も染めたり加工が施されているとのことです。絵具は水彩、ガッシュ、アクリル、金などが使用されていました。
どことなく日本の洛中洛外図を見るような面白さがありました。波は伝統模様の青海波、雲は瑞雲とよく似ています。金で画面をダブルマット風にして陸などを外にはみ出す描き方は、町の勢いや繁栄を讃えているように感じました。
リエ・クド・ジャイマズ《ベイオール》 ベイオールはイスタンブールの新市街の中心の町
市電?だけが線遠近法で描かれているのが何ともユニークです。視点の自由さにびっくりするような絵ですが、市街地のにぎやかさや建物がひしめき合っている様子がダイレクトに伝わってくる絵です。
セラップ・オヌル《漁師達》 1890年にガラタで起きたサバの大漁を描いた作品
とにかくサバが沢山描かれていて、人々がせっせと収獲している様子と町の風景が描かれている絵です。線遠近法は用いられていないけれど、明らかに前景・後景の区別はあり、緩やかな遠近感がそれほど違和感なく目に入ってきました。心の遠近法というようなもので描かれていると感じました。
デンズィレ・オズギュン《イスタンブル》 円形の海に乙女の塔を描き、周りに宮殿やモスクなどの歴史的建造物を描いた作品
小さい子供がテーブルの四方に座る人を描くと、上下左右に人が倒れたように描くことがあります。ふとそれを思い出しました。この作品ではそういう平面性をあえて取り入れてモチーフを配置しているようで、特に塔の方向性が印象的でした。
この企画展の作品点数はあまり多くはありませんが、大変興味深く見ることができました。というのも、私は普段いわゆる西洋的な線遠近法や陰影法を使った写実的な描き方をしていますが、それは単に一つのものの見方や表現方法に過ぎないと感じたからです。多様なものの見方と自由な表現方法を楽しむことが絵画を見たり描いたりするには大切なのだ、ということですね。
企画展の他に常設もゆっくり見てきました。ユーラシア大陸は広いから文明・文化も様々で面白いです。
猛暑で外出も躊躇するところですが、トルコの細密画展は見たことがなかったので足を運びました。館内に入ると涼しく静かで快適でした。お近くの方は是非。