[作品] 《ケイトウ(久留米ケイトウ)》
長い間かかっていたケイトウがやっと終わりました。
構図は中心に彩色されたケイトウを据え、右に鉛筆で拡大図を縦に3つ並べ、ケイトウの細長い縦のラインを意識して二列になるようにしてみました。
今回どうしても入れたかった図はトサカの下にある5mmほどの小花で、特に種が出来て落ちるところは可愛くてどうにか絵にしたいと思っていました。図では中の種が分かりやすいように花弁をやや開き気味に描いてあります。
種は雌しべの下の子房にできます。面白いことに大きくなると子房の上部が、まるで帽子がとれるように外れて、種も落ちてきます。
最初は気づきませんでしたが、花を虫眼鏡を見ているうちに「あれっ、外れるんだ」と気が付きました。花の部分を切り取ってピンセットで摘まみながら観察すると帽子と種がポロポロと落ちてくるので、いつも机の上の後片付けが大変でしたね。
ですから、きっとケイトウの根元には3mmくらいの小さな帽子が沢山落ちていると思います。種は光沢のある黒で大きさは1.3mmくらいと微小。土の上に落ちても全然分からないかもしれません。
花は花弁が5枚、雄しべが5本、雌しべ1本、萼が2,3枚です。雌しべの下にあるのが子房で中に種ができます。
雄しべはつながっていて、種が大きくなると葯が取れたり、つながっている部分がしぼんで下に下がってきますが、若いうち(下図)は子房の下半分のカップの境界線と同じくらいの位置でした。しぼんで下に下がると種が入っている子房の下半分がカップのように見えてきます。
ところで、ケイトウの花というのは植物の帯化(たいか)というのが大きく関わっているようです。
帯化というのは茎の先端の成長点細胞が横方向に増えて帯のようになることで、遺伝子の変異や虫などによる茎頂の損傷など原因は色々あり、多くの植物で見られます。
ケイトウの花は茎が横方向に増えて広がりそこが花芽に変わることで込み合ってフリルのようになるとのことで、ケイトウは帯化が固定化された植物だそうです。(参考:日本植物生理学会 みんなのひろば Q&A)
帯化は石化とも言いますが、そういえば生け花でよく使うものに石化柳がありますね。幅が広くなった柳です。他にもエニシダで帯化したものもよく見かけます。
自宅のベランダに‘ドラキュラ’という名前の付いた赤い葉脈のケイトウも植えましたが、これが物凄く帯化して花近くの茎は平べったくなって幅が4cmもありました。ちょっとモンスターチックで描くかどうか微妙ですが。
最近、何でも終わりは来るなとつくづく思います。絵を描いていると先が長くて途中で嫌になったり、思うようにいかなくて落ち込むことも多々ありますが、兎に角描いているといつか終わります。
そしてそれが結構あっけなかったりもします。
“[作品] 《ケイトウ(久留米ケイトウ)》” に対して4件のコメントがあります。
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こんにちは、kyouさん。とうとう大作が仕上がりましたね!作品が仕上がって、その観察力には本当に感嘆しています。それにしても、「帯化」という現象、全く知らなかったのですが、ケイトウの花の独特の形が、じつは茎が横に広がっていきそこに花芽がつく「帯化」の産物だったとは、勉強になりました。そういわれてあらためてよく見ると、なんとも過剰に溢れ出た泡がそのまま固まったみたいな雰囲気を醸し出していますよね。
子供の頃、ケイトウの花は好きではありませんでした。花らしい柔らかさや女の子の好む儚さみたいな雰囲気がぜんぜん無くて、ひと言で言えば「変なの~」という感じで(笑)
植物はとても面白いものですね。
どうもありがとうございます。思った以上に長くかかってしまいました、本当は年内にケイトウを2枚くらい描く予定でしたけど(笑)
私も帯化は知りませんでした。石化柳は知っていましたが全然結びついていませんでした。今まで変な形の植物を単に奇形と思っていましたが、きっと帯化と関係があるものも多いのかもしれませんね。
確かに私も正直、ケイトウを好きとかきれいとか思っていませんでした(笑)面白いモチーフだから描いてみたいと思った方が強いです。
描いてみると興味深く、種類も多く、描き甲斐もある(ありすぎました)ので、また挑戦してみたいなと思っています。なかなか奥が深い植物です。
見事です、花を細かく描いていく作業、本当に終わりが見えてこない気持ち
良く分かります、私も今似たような状態、ボタニカルアートとの宿命みたいなものですね。
ただもくもくコツコツ描けばいずれ完成に近ずく、何処で終わりにするか?
ケイトウの学者の様になりましたね、それだけ熱心に描いた結果ですね。
どうもありがとうございます。
長い時間かかると途中で気力が続かなくなります、でも気持ちに張りが無くなると作品に良くないので、どうやって自分を乗せるかが大変です。
うまくいかなかった箇所もいくつかありますが、いつも現時点ではここまでだったと思っています。