[展覧会]「URUSHI 伝統と革新」展
横浜のそごう美術館で開催中の「URUSHI 伝統と革新」展をいつもの親友と見てきました。
日本を代表する漆芸家の名品や意欲的な作品など、いずれも最高の技術に裏打ちされた凛とした品格のある作品ばかりでした。
やはり松田権六の《赤とんぼ蒔絵箱》は素晴らしかったです。風にそよぐ金色の葦(ススキかも)の間を数匹の赤とんぼが飛んでいる図柄で、地の黒と穂の金色を背景に赤とんぼの朱や翅の白が際立っています。漆特有のしっとりと落ち着いた中にもリズミカルな動きがあって惹き込まれました。
また、穂は下の方から先端の細かなところまで神経が行き届き、吟味された曲線になっていますが、それがいとも自然で柔らかく軽やかな風情に見えるのが凄いところだと思いました。
もう一つ、隣に展示されていたのは《迦陵頻伽宝相華文蒔絵経箱》です。迦陵頻伽は人頭鳥身で一見天女のようにも見えます。美声で法を説くと言われるので経箱にはぴったりの図柄なのかもしれません。流麗に描かれた迦陵頻伽は見ているだけで、しばし現実とは違う世界に連れて行ってくれる存在ですね。
山下義人氏の「蒟醤(きんま)蒔絵食籠《水の音》」は一番印象に残った作品でした。食籠(じきろう)というのはお菓子などを入れる器だそうです。
黒地に緩やかな灰色の水紋が同心円状に広がっていて、その中心に一輪、水面にポトリと落ちた真紅の椿が描かれています。開ききらない筒咲きの感じや、細かな蕊まで精巧に描かれているのが本当に見事でした。艶やかな赤に深い心の裡が秘められているようで、なにか色気を感じる作品でした。
こちらに蒟醤(きんま)が分かりやすく載っていました。→ 香川県漆芸研究所 香川の三技法
赤塚自得の《ダリア螺鈿蒔絵料紙箱》は蓋の右下と左上からダリアとヤエムグラ(でしょうか?)が配された図柄になっています。ダリアの花が力強く写実的に描かれていて生き生きとしたリアリティがあり、それが更に作品を輝かせているようでした。また、菊ではなくてダリアというところも新しく自由な感じがしました。
会場には幾何学模様や抽象的な図柄の作品も多くあって、好みの分かれるところかもしれません。洗練されたオブジェのような雰囲気のある作品は漆芸の幅広さを感じました。
ゆっくりと間近に素晴らしい漆芸作品を見ることが出来て、心の背筋がピンとした良い展覧会初めでした。
そごう美術館 「URUSHI 伝統と革新」展