「ピエール・ボナール展」

 六本木の国立新美術館で開催中の「ピエール・ボナール展」を見てきました。

 ピエール・ボナール(1867-1947)は印象派の後のナビ派に属する画家で、ナビ派の特徴の一つである色面による平面的な画面構成が作品の魅力です。また、ボナールはとりわけ日本の浮世絵の影響が大きく、会場では一目でそれと分かる作品もありました。

 

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 ボナールが描いたもので一番好きなのは、室内の何気ない風景を描いた作品です。解説にボナールの言葉として「不意に部屋に入ったとき一度に目に見えるものを描きたかった」「それは位置関係や奥行きなど把握する以前の総合的な感覚」というようなことが書いてあり、大変興味深く読みました。

 現実の室内の風景を再現するのではなく、脳裏にあるイメージとしての風景、物理的なものだけでななく温かみや雰囲気といったものが加味された風景を、キャンバスという平面にベストな色と形で再構成していくというような感覚なのかなと思いました。

 家具や人物、食器などのモチーフが画面をリズミカルに分割するかのような色面になっているのは本当に美しく、またその色面も単純なものではなく微妙で洗練された色合いになっているのが素晴らしかったです。

 《猫と女性 あるいは 餌をねだる猫》では四角い(正方形のような)キャンバスを区切る丸いテーブルのラインが絶妙で、クリーム色のテーブルクロスに緑の衣服の女性とバラ色の壁、しなやかな白猫のコントラストがなんとも鮮やかで大変惹きつけられました。

 また《ル・カネの食堂》も白いテーブルクロスをかけたテーブルの入れ方が面白く、人物をテーブルの端(画面の端)に配し、食器類が吟味されたバランスで配置されている構図はずっと見ていたいような心地良さがありました。

 画面から溢れるオレンジ色は明るく豊かな日常の営みを感じさせ、この一枚だけでもしみじみと「美しいものを見た」という充実感を味わえました。

 

国立新美術館 「ピエール・ボナール展」

 「ピエール・ボナール展」” に対して2件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >ワインさん
    そう、第一印象ですよね。ワインさんのお宅ならきっとすっきりと美しいお部屋、ワインさんの絵も掛かっている…そんな絵になるのかしら。
    頭に残る残像のような第一印象の絵画化ですよね。ボタニカルは全然違うけれど、私はその植物を見た時の「ああ、美しいな」とか「不思議だな」という気持ちを忘れないように描いていきたいです。

  2. ワイン より:

    しみじみと美しいものを見たという展覧会、そういうのは本当に良い時間ですね。チケットのボナールの絵をみただけで、暖かい色合いがこちらに伝わってきます。
    「不意に部屋に入ったとき一度に目に見えるものを描きたかった」・・ではボナールさんが私の家に突然来た場合、どんな絵を描くだろうか?なんてちょっとどきっとしました(笑)第一印象って案外正確なものですよね。

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