「落合芳幾」展 &「芳年」展

 原宿の太田記念美術館で開催中の「落合芳幾」展と、練馬区立美術館で始まった「芳年-激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」展を見てきました。

 

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掲示板のポスター

 芳幾は歌川国芳門下で、芳年には兄弟子にあたります。芳年の展覧会は最近よく見かけますが、落合芳幾のまとまった形の展覧会は珍しいので「これは絶対行くぞ!」と思っていました。

 

 今回楽しみにしていた作品の一つが、大判三枚続の《善悪思の案内(ぜんあくこころのあんない)》です。

 三枚続の横長で、橋の中央には女の人に遊郭へ誘われている男、左に遊郭関係者、右に男の家族が描かれていています。特に目を惹くのが心の葛藤を擬人化した善玉と悪玉の小人(顔に「善」「悪」と書かれています)が人物の周りに多数纏わりついているところです。

 悪玉の小人は男を紐で遊郭側に引っ張ったり、釣り糸でつったり、赤い悪印の扇子で囃し立てたり、家族側の子供を泣かしたり?とやり放題。数で負けている善玉の小人は、かろうじて男の袖を家族側に引き寄せたり、行かせまいと足を押さえたり必死の抵抗を試みていますが…。

 「善玉悪玉って、何かコレステロールみたいだなぁ」と思いつつ…それにしても善玉、少なすぎですよー。

 

 もう一つは、妓楼の中にある風呂場を描いた《時世粧年中行事之内 一陽来復花姿湯》と、市井の風呂場を描いた《時世粧年中行事之内 競細腰雪柳風呂》。こちらも大判三枚続で当時の風俗が伺われてとても面白かったです。

 妓楼の方は座敷からそのまま風呂場につながっている感じで、遊女や禿、下働きの男などがまったりと楽しそうにしています。市井の方は女同士で喧嘩している場面なども描かれて賑やかそう。

 さて描かれている裸の女性はというと、着物ではウエストのくびれなんか必要なかったでしょう、なんだかトロン、ツルンとした身体つきで人形のように見えます。当時の人はこれがリアルに見えたのでしょうか。  

 他には猫の顔をした人物や人面金魚などユーモアや風刺精神をにあふれた作品は流石国芳門下という感じ。特に役者の似顔を画面上部に小さく描き、中央に横顔を黒い影絵で表したシリーズは斬新なアイデアで、「芳幾」というとすぐこのシリーズが浮かんできます。ポスターは芳年との競作で有名な血みどろ絵の《英名二十八衆句》でインパクトはあるかもしれませんが、私は洗練されたセンスとユーモアのある作品の方が芳幾らしさがあるように思えて好きです。

「芳幾」展を見終わってから練馬区立美術館の「芳年-激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」展へ向かいました。

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練馬区立美術館の外観

芳年は最近何回か見ていますが初見の作品もあり、本展は質・量とも充実していました。

《義経記五條橋之図》は、真ん中に大きな月が輝き、それを挟んで両端に毬のように宙に飛ぶ義経と長刀を豪快に振るう弁慶の絶妙な構図。それが建物のガラス面に配してあるのもワクワク感があって良かったです。

《藤原保昌月下弄笛図》は、盗賊が薄野を笛を吹きながら悠然と歩む保昌を襲おうとするが、一分の隙も無い保昌に気圧されて手出し出来ずにいる、といった場面を描いたものです。

 間近で見ると、先ず和紙に摺られた月夜の美しさが伝わってきます。そして静かな月に流れる雲やなびく薄、その中にあって異様な緊張感で対峙する人物たち。知らぬ間に芳年の世界にどっぷり浸かってしまいます。

 また、数はわずかでしたが完成作品と画稿(絵の下描き)が隣り合って展示されていたものがあり、大変興味深かったです。モデル(弟子でしょうか)にポーズをとらせて写実的に素描した上で淡彩が施されていました。当たり前ですが物凄く上手いデッサンです!

 完成した浮世絵と見比べると人物の動きや形がより誇張されていたり、持ち物の形が変わっていたりと、決してそのまま写しているのではないところが印象的でした。

  

 蛇足ですが、芳年展のカタログはお買い得かなと。

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大判竪三枚続がこんな感じにワイドに。

ハードカバーで細めのA4サイズ、印刷の色も良い感じ、厚さは3cm越えのボリュームで途中5ページほど折り込みで大きなページあり。それで2,500円也は良心的じゃありませんか?このごろ絵葉書くらいしか買わないけれど、買っちゃいました。

太田記念美術館「落合芳幾 展」

練馬区立美術館「芳年-激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」