「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」
国立新美術館で開催中の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」を見てきました。
展示作品は全てエミール・ゲオルグ・ビュールレ(1890~1956)による印象派を中心としたプライベート・コレクションで、点数はそれほど多くありませんでしたが質の高い作品ばかりでした。
平日ということもあってか思ったほどの混雑はなく、一点一点じっくり見ることが出来ました。
クロード・モネ《陽を浴びるウォータールー橋、ロンドン》は、光や靄に包まれた橋や川面が淡いピンク色、クリーム色、薄紫色などで混然一体に描かれた作品で、絡まる筆致は全てを画面に定着させようとするかのようでした。
エドゥアール・マネ《燕》は、草原に白いドレスと濃い灰色のドレスの女性が座り、傍に黒い燕が飛んでいる風景が描かれています。
無彩色が爽やかな緑に映え、手応えのある色として存在感がありました。マネの「黒」は有名ですが、こんなところにも効果的に使われているのかなと思いました。
今回一番印象的だったのが、ドガ《リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち》でした。ドガの卓越したデッサン力が人物の形や雰囲気までを的確に捉えていて、その生き生きとした線は本当に魅力的でした。
さらに色遣いも大胆で、特に手前の白い服に赤いリボンをした娘さんと背景のエメラルドグリーンが鮮やかでした。小さいながらも意志的な彼女を包む白がとても力強い色に感じました。
ポスターの美少女《可愛いイレーヌ》は勿論美しい作品でルノワールの巧みさは抜群でしたが、私はドガのこちらの娘さんの方が好きです。
もう一つドガの《控え室の踊り子たち》は踊り子が逆光で描かれている作品で、暗い室内の様子や踊り子と窓とドアの隙間から差し込む明るい光とが、美しいコントラストを作っていました。
構図は細長い画面の対角線に添うように、一つは床と壁の境界線、一つは踊り子たちの並びの線があり、二本がクロスしているように見えました。光の方向も絶妙で素晴らしかったです。
どの展覧会を見てもやはり花の絵が気になります。ゴッホ《花咲くマロニエの枝》は心に残りました。白い花が空色の流れるタッチに取り囲まれているのが晴れやかで、同じく白い花を描いた《花咲くアーモンドの木の枝》を思い出しました。
マロニエ(セイヨウトチノキ)は、小葉の側脈がとてもはっきりした細い線になっています。私にはその線とゴッホ特有のマッチ棒のようなタッチとが呼応するように見えて興味深かったです。
マロニエ 花 画像:季節の花300
マロニエ 掌状複葉(葉柄の先に小葉が放射状についたもの) 画像:季節の花300
最近、自分の好みのルネサンスやフランドル絵画、ラファエル前派などを見ることが多く印象派の展覧会を見るのは久しぶりでした。その分新鮮で色々と気づくことが多かったです。
印象派の光にあふれた明るさと平面の強さは次の時代へと続く新しさを感じさせて凄いなと思いました。また、タッチやストロークもいつも見る絵画とは違って自由でのびやか。こちらの心まで豊かに開放的になるようでした。
「印象派展良かったですよ」と薦めてくださったKさん、どうも有り難う!
“ 「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」” に対して2件のコメントがあります。
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>ワインさん
>印象派ならではの絵の持つパワーも感じます。
本当にそうですね。筆遣いとか、描いている画家の存在も強く感じます。
>ドガは一瞬のうごきや空気感をみごとに絵の中に閉じ込めた、あの雰囲気が大好きです。
ワインさん、ドガがお好きなんですね。私はあまり実物を見たことがなかったのですが、今回ドガの描写力が凄いなぁと。
マロニエとアカバナトチノキを交配したピンク色の花の「ベニバナトチノキ」が街路樹とかにわりと見るかもしれません。みなとみらいに沢山植わっていたと思いますよ。
私も印象派の展覧会は混むだろうなーという先入観が強くて、あまり足を運ばないのですが、実際に本物の絵を前にすると、やはり印象派の作品はkyouさんのおっしゃるように自由で伸びやかで心が開放的になりますね。印象派ならではの絵の持つパワーも感じます。
ドガは一瞬のうごきや空気感をみごとに絵の中に閉じ込めた、あの雰囲気が大好きです。
マロニエの葉はよく見ますが、花がこんなふうだったとは知りませんでした。存在感大きいですね。