「フローラ ヤポニカ」「植物画の黄金時代」
上野の国立科学博物館で開催中の「フローラ ヤポニカ -日本人画家が描いた日本の植物-」を見てきました。
この展覧会は昨年から今年にかけて英国キュー王立植物園で開催されたもので、今回はその中からの抜粋展示とのことです。
まず目を見張るのは作品の植物学的な正確さで、植物の色や形、内部の構造、成長過程などを客観的にとらえる観察眼のすばらしさ、それを一枚の紙の上に具現化していく技術の高さは見ごたえ十分。また、それを踏まえた上で画家の個性が見えてくるのも興味深いところでした。
展示作品は現在活躍されている植物画家の方ばかり、これほどレベルの高い作品が揃う事は滅多にないので大変勉強になりました。
他に『カーティス・ボタニカルマガジン』に掲載された日本の植物のイラストレーション原画が展示されていました。
サイズは小さいものでしたが、A.Farrerの《イネ科 ホケイチク》は細密な描写と大胆な構図、力強い彩色で存在感がありました。
日本では水彩画というと割とあっさりとしたぼかしやにじみのある淡彩画や、暖かい味のある絵手紙をイメージされる方が多いかもしれませんが、それとはまったく異質の、時間をかけ端正に描かれた水彩画の美しさを堪能できるのではないかと思いました。
ところでもう一つ、東京駅のすぐ傍のKITTE内にあるインターメディアテクでも「植物画の黄金時代 -英国キュー王立植物園の精華から」を開催しています。
こちらでは18,19世紀の植物画が中心で、何点かは植物画と対になるように植物標本が展示されているのも面白かったです。
ポスターにもなっているゲオルグ・ディオニシウルス・エーレトの《ユリ科チューリップ属の栽培品種》はヴェラム紙に鉛筆、インキ、水彩で描かれたものです。
チューリップの持つ生命力と格調高い画風が際立っていました。他に《ツバキ科ナツツバキ属の一種》では青みがかった葉や密集した雄しべが美しく印象的でした。エーレトの作品を見ると、説明としての植物画を超えた絵画作品としての魅力に惹きつけられるような思いがします。
インターメディアテクは初めて行きましたが、公共施設で入場料は無料。企画展の植物画を見終わるとそのまま常設展へフロアが続いていました。
常設には東京大学の歴史を感じさせる学術標本や研究資料などの「学術文化財」展示されており、まるでここだけ時間が止まっていたかのような古き良き時代のアカデミックな空間になっていました。
動物のはく製や骨格標本がたたずみ、貝殻や鉱物などがアンティークなガラスのキャビネットに鎮座している様は摩訶不思議な静寂があり、ここがビジネスマン行きかう丸の内であることを忘れそうでした。
“ 「フローラ ヤポニカ」「植物画の黄金時代」” に対して4件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。
>ゴンベッサさん
>いい絵を見るのは勉強になって良いし感動もしますね
そうですね。植物画に限らずですけれど。
>写真以上実物以上に見せるのがアート
>やはり構図や強調する場所を自分でコントロール
>出来るの絵ですよね。
そうですね。私は何より描くことが好きなので、一人で植物と向き合って描いているのが幸せです。
地方都市に棲んでいると気楽には見に行けないので
指をくわえて見ているだけです。
いい絵を見るのは勉強になって良いし感動もしますね
写真以上実物以上に見せるのがアート
やはり構図や強調する場所を自分でコントロール
出来るの絵ですよね。
>ワインさん
>日本の植物画家のレベルの高さをあらためて知った気持がいたしました。
本当にそうですね。素晴らしい技術を出来るだけ学び取りたいものです。
彩度の高い作品が多く、発色がすごく良いのにも感服しました。
>17世紀のクンストカンマーといわれる部屋にでも入り込んだような気持で、現実からいっとき解放されたような気分になりました。
同感です。正に「驚異の部屋」というコーナーもありましたけど、全体がそのようでしたね。久しぶりに澁澤龍彦とか思い出しました。
私も、実家に行ったときに上野の科博とKITTEをはしごしてふたつの展覧会を堪能してきました。とくに上野のFLORA JAPONICA展は息をのむような作品がずらりと展示されており、日本の植物画家のレベルの高さをあらためて知った気持がいたしました。絵であるのに、実物以上に植物の生命が感じられるような感じがして、それは本来矛盾しているはずなのに、確かにそう感じられてしまったところが不思議です。私もインターメディアテックは初めて足を踏み入れました。時間が止まったかのような、17世紀のクンストカンマーといわれる部屋にでも入り込んだような気持で、現実からいっとき解放されたような気分になりました。