「歴史×妖×芳年」

 横浜のセンター北にある横浜市歴史博物館で開催中の「歴史×妖×芳年」を見てきました。(会期は今日が最終日です)

 作品は、先に太田記念美術館でも見た「新形三十六怪撰」などの妖の世界と、歴博らしく歴史上の出来事や伝説、偉人などを題材とした作品、錦絵新聞などが展示されていました。

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 興味深かったのは彰義隊と官軍の戦いを描いた大錦三枚続のシリーズで、流血には赤に膠か何かをまぜて厚みが付けてあり、拘りを感じました。芳年は実際に上野の戦いで討ち捨てられた死体を弟子を連れてスケッチしたとも言われています。でも、歴博では子供さんの来館も多いのであまりに残酷なものはないように感じましたけれど。

 無残絵と呼ばれるスプラッターで過激な作品をどうして芳年は描いたのだろうと思うと、彼の嗜好というより時代の求めも大きかったと思います。今ここにある悲劇や大きな不安を浮世絵という手に取れる形にして眺めてみる。過ぎたものとして確認する。そういった留飲の下げ方もあったのかもしれないと思いました。

  

さて、血なまぐさいのより美人画の方が好きなので、美人画シリーズ「風俗三十二相」がお気に入り。タイトルが全て「いたそう」「うるさそう」「はずかしそう」と「~そう」になっているのも面白いところ。展示は「めがさめそう」と「むまそう(うまそう)」しかありませんでしたが。

 「めがさめそう」は、アサガオが咲いている早朝、「房楊枝」で歯を磨いている女性を描いたもので今の季節にぴったり。

  http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312774?tocOpened=1

 「むまそう」は、鮮やかな染付の器に盛られたエビの天ぷらを食べようとしている女性。縞の着物が粋。

  http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312776?tocOpened=1

国立国会図書館デジタルコレクション「風俗三十二相」

  お化け関係の「新形三十六怪撰」は前回書いたので省略。本展は今日でお終いですが、太田記念美術館で9月から前回に引き続き「月岡芳年 月百姿」が始まるのでそちらも見に行こうと思っています。

  月百姿は全てに月が描き込まれている美しいシリーズ。大胆かつ神経の行き届いた構図、洗練された色彩、人物の微妙な表情など見どころが沢山です。以前から全部を見てみたいと思っていたので心待ちにしています。

 ところで、歴博の常設展も古代から近現代までコンパクトですが趣向をこらしていて楽しめました。

 近現代のコーナーで小振りな「ちりめん本」(明治~大正期)というものを発見。日本の昔話などが外国語に翻訳されて和紙に印刷された後、ちりめん状に加工したことから「ちりめん本」と呼ばれているそうです。

 何だか手触りが良さそうで、可愛く、日本のお土産にぴったりだったのでしょうね。

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「因幡の白兎」

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「鼠の嫁入り」

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「鼠の嫁入り」 ちりめん具合はこんな感じ。

 

 横浜市歴史博物館は住宅街の真ん中という立地。近くにこういう施設があると子供たちは小さい時から面白いものに触れることができるのだろうな、と思いました。

横浜市歴史博物館

太田記念美術館 「月岡芳年 月百姿」

 「歴史×妖×芳年」” に対して2件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >ゴンベッサさん
    >元々美女を美しく見せる配置は
    >花を美しく描くのと同じ感覚なので参考になりますよね。
    なるほどそうですね。メインの花をどう引き立てるかいつも考えます。

    >蘭の花は妖女ですかね。
    概してランの花は妖しいですよね。でも種類も色々で清楚なものから、豪華なもの、奇怪なものまでゴンベッサさんなら数えきれないほど妖女をご存知かと。

  2. ゴンベッサ より:

    美人画構図が面白いですね~
    手の配置、身体のしなり着物や小物などの配置が見ていて
    面白いです。
    元々美女を美しく見せる配置は
    花を美しく描くのと同じ感覚なので参考になりますよね。
    蘭の花は妖女ですかね。

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