「横浜芝山漆器の世界」
横浜開港資料館で開催中の「明治のクールジャパン 横浜芝山漆器の世界 金子皓彦コレクションを中心に」を見てきました。
開港以来、海外に陶磁器が輸出され人気を博したということは知っていましたが、横浜でこれほど盛んに漆器が作られ輸出されていたことは知りませんでした。
芝山漆器(芝山細工)はもともとは江戸後期に現・千葉県山武郡芝山町の芝山専蔵によって考案されたもので、それが開港後に横浜でも作られるようになり横浜芝山漆器として輸出されたそうです。
芝山細工の特徴は何といっても様々な漆製品に施された立体的な象嵌で、さらに象嵌に用いられた材料も貝、べっ甲、象牙、牛骨など変化に富んでいるところです。
また技法としては、貝などの材料を加工した後、土台となる漆製品に埋め込む「平模様」、図柄を木でレリーフ状に形成したのち貝を重ねて貼り合わせる「寄貝」、漆製品の上に花びらなどを立体的に貼り合わせ立体作品に近いような「浮き上げ」という3工法があるそうです。
「浮き上げ」は今では技術を持つ方がおられず行われていないとのことですが、ふと、失われた技術ということや精巧な細工や立体感などから、かつて同じように横浜で花開いた陶磁器の眞葛焼きを連想しました。写実的で立体的な花びらなどはよく似ており、横浜に来て発展した芝山漆器が海外向けにより豪華にということで眞葛焼きの影響を受けたのかも…。
展示で印象に残ったのは二曲の《豊年満作の図屏風》でした。稲刈りを終えた田んぼと紅葉を背景に、稲穂を担ぐ人や籠一杯の柿を運ぶ人、戯れる子供や女性が見事な芝山細工で描かれていました。特に象牙で作られた顔や手足は極めて精巧で見ごたえがありました。また腰に引っ掛けた鎌や籠の柿はそれぞれにぴったりの素材で作られているところが素晴らしかったです。
展示スペースはそれほど大きくはないですが、芝山細工の工程が詳しく書かれていたのが興味深く、また小さな玩具やお土産が可愛らしく目を惹きました。
現在開港資料館は工事中のようで外観が覆われていたのが残念でしたが、建物の中は常設展も含め普段どおりに見ることができました。お近くの方は是非。
横浜開港資料館 「明治のクールジャパン 横浜芝山漆器の世界 金子皓彦コレクションを中心に」