「レオナルド・ダ・ヴィンチと《アンギアーリの戦い》展」

八王子の東京富士美術館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチと《アンギアーリの戦い》展」を見てきました。

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 アンギアーリの戦いというのは1440年にフィレンツェ軍がミラノ軍に勝利した戦いで、フィレンツェ共和国はレオナルド・ダ・ヴィンチにヴェッキオ宮殿の五百人大広間に《アンギアーリの戦い》を題材とした壁画を依頼しました。

 同時にミケランジェロにも壁画を依頼し、ミケランジェロはピサ軍との戦いで勝利したカッシナ(カッシーナ)の戦いを題材として取り組んでいました。

 二大巨匠の壁画が大広間を飾る予定でしたが、結局双方未完に終わり壁画は現存していません。(但し、《 アンギアーリの戦い》は調査が行われているようです)

 偉大なこの二作品は、本人の下描きやデッサンと後世の画家による模写から片鱗をうかがい知るほか無いのが現状です。

 ということで、今回の展覧会では《アンギアーリの戦い》の軍旗争奪場面を模写した作者不詳《タヴォラ・ドーリア(ドーリア家の板絵)》が日本初公開で展示されています。

 板絵は部分的に金色で塗り込められていて全体像が掴みづらくもどかしい感じもしましたが、躍動感のある複雑な構図で人物の表情や馬の骨格や筋肉の描写が本物は如何ばかりかと想像させられました。

 一方の《カッシナの戦い》では、アリストーティレ・ダ・サンガッロ《カッシナの戦い》(ミケランジェロの下絵による模写)が素晴らしい作品でした。フィレンツェ軍の兵士が水浴している時にピサ軍が攻めてきたのに気づき慌てて川から上がる様子を描いたもので、戦争画にしてはちょっとユニークな場面かとも思いました。画面はダヴィデをはじめ完璧な男性像を得意とするミケランジェロらしく、ほとんどが男性裸体像で埋め尽くされているのも面白いです。

 展示は他にルーベンスによる《アンギアーリの戦い》や、イタリアバロックのルカ・ジョルダーノ《アマゾン族の戦い》が良かったです。

 また、資料などでよく見るサヴォナローラの処刑を描いた作品もあり(異時同図法でサヴォナローラが描かれている)興味深く見ることができました。

 展示の最後で《アンギアーリの戦い》の大変精巧な立体復元彫刻があり、これが原画の構図を把握するために貴重なものでした。

 特に立体を上から見た様子が渦巻状になっており、螺旋や渦巻きに関心を寄せていたダ・ヴィンチがモデルを使ってこれを構成したのか、はたまた頭の中で構成していたのか、改めて天才ぶりに驚かされました。

東京富士美術館 「レオナルド・ダ・ヴィンチと《アンギアーリの戦い》展」

「レオナルド・ダ・ヴィンチと《アンギアーリの戦い》展」” に対して2件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >きよぴーさん
    > 最後にあった立体復元彫刻を見てから、
    > 絵のところに戻り鑑賞しました。
    > すると最初に見た時とは違い、より立体的な迫力を感じました。
    あれは本当に助かりました、どんな模写を見ても分からなかった箇所がなるほどこうだったのかと腑に落ちました。上から見たところはおおっと興奮しました。
    レオナルドの原画を探す調査で発見されたら凄いなぁと思います。

    > 植物画を描く時も、奥にあって見えないところも
    > しっかり意識しなくてはと思いました。
    そうですね。それが奥行きのある画面を作るのに大切ですね。

  2. きよぴー より:

    今日、行って来ました。

    部分的に欠けている箇所もあり、また金色の板絵ということもあって、
    少々見づらいと感じました。
    でも、人物や馬などの躍動感はしっかり伝わってきました。

    最後にあった立体復元彫刻を見てから、
    絵のところに戻り鑑賞しました。
    すると最初に見た時とは違い、より立体的な迫力を感じました。

    平面に描きながらも、ダヴィンチは常に立体的構造を意識していたのでしょうね。
    あっ、いや意識しなくても自然に出来ていたのでしょうね。

    植物画を描く時も、奥にあって見えないところも
    しっかり意識しなくてはと思いました。

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