「ホイッスラー展」
横浜美術館で開催中の「ホイッスラー展」を見てきました。
《白のシンフォニー№2:小さなホワイト・ガール》と《ノクターン:青と金色-オールド・パターシー・ブリッジ》等を配したチラシ
ホイッスラーといえば唯美主義、ジャポニズムの優美な油彩というイメージしか持っておらず、展覧会も勝手に油彩が中心と思っていましたが、意外にも版画(エッチングやリトグラフなど)が多く、ホイッスラーをよく知らない私には新鮮な驚きがありました。
とは言え今回の目玉、油彩《白のシンフォニー№2:小さなホワイト・ガール》と《ノクターン:青と金色-オールド・パターシー・ブリッジ》はやっぱり圧倒的に美しく、来た甲斐があったという感じでした。
2つの作品は前者が明るい色調、後者が暗い色調でその意味では正反対ですが、それぞれの白と青の色の幅が限りなく豊かで、柔らかく、油彩の奥深さ色彩の豊かさを改めて実感しました。
《白のシンフォニー№3》を配したチラシ
《白のシンフォニー№3》もホワイトガール同様に白を基調とした作品で、ペアのような展示になっていました。美しい色調もさることながら、こちらで気になったのは右端に描かれていた植物でした。
確証はありませんが、上からケマンソウ(タイツリソウ)、ツツジ、一番下がムラサキケマンではないかと思います。《小さなホワイトガール》にもツツジは描かれていました。ケマンソウが描かれていることが珍しかったので記憶に残りました。
(ケマンソウ 別名タイツリソウ)画像:季節の花300
会場の説明書きに「東洋の品を描き込むことで画面の装飾的効果を狙うだけでなく、習慣的な象徴性や物語性から作品を開放する」というようなことが書いてありました。それに照らし合わせてみれば、描かれた植物がキリスト教のユリやバラ、ギリシア神話のスイセンやヒヤシンスといったものではなく、このような顔ぶれになったのも、なるほどと思います。
ケマンソウは1842年南京条約で中国の植物採集が許可された際に、ヨーロッパに紹介されたそうです。
《ノクターン:青と金色-オールド・パターシー・ブリッジ》は、広重の「名所江戸百景」の 《京橋竹がし》の影響が一目瞭然ですが、全く違ったホイッスラーの世界に生まれ変わっているのが素晴らしい所以です。(公式HPに並んだ画像があります)
第一印象は、想像以上に暗い画面だなというもので、だんだん目が慣れてくると暗い中に色々な青が見えて来る感じでした。ゆるやかに物の輪郭を捉えているのが何とも魅力的でした。
ジャポニズムはこの作品を飾る「額」にも及んでいて、額には青海波の模様が彫られ、右側中程には丸い蝶の家紋のようなものもありました。作品と額とが一体となって自身が抱く理想の美を完成させているようでした。
ホイッスラーはイニシャルのJWを蝶の形に図案化して、作品に描き入れています。愛蔵品の展示に日本の「いろは引紋帳」もあり、興味深く眺めたことだろうと思いました。
また今回の展覧会では様々な手法の版画が展示され、ホイッスラーが優れた版画家であることがよく分かりました。特に「リトティント」という独特な手法を用いた《早朝》《テムズ川》は、水墨画のように墨の濃淡の微妙な味わいがあり、強く印象に残りました。
会場は思ったほど混んでなく、ゆったりと見て美術館を後にすると、少し暗くなっていました。
如何にも師走っぽい横浜の風景を見つつ帰りました。
“ 「ホイッスラー展」” に対して4件のコメントがあります。
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>もみじさん
>美しいものに出会った時の感動は何度あっても良いものですね。
そうですね。有難いことですよね。展覧会じゃなくても花の構造とか蔓の巻き具合とか、植物にも沢山感動できますよね。
> 来年もまた素適な絵を観せてくださいね(^.^)
今年中に一枚アップと思っているんですけど(笑)
一年が年々早くて、気が付くと後半月。来年はどうなることか。
「ホイッスラー展」またまた心が洗われる様な感慨に浸っていらしたのでしょうね(^.^)
美しいものに出合った時の感動は何度あっても良いものですね。
kyouさんは今年も多数の展覧会にいらして意欲に燃えたのではないですか?
来年もまた素適な絵を観せてくださいね(^.^)
>ちろりんさん
おっしゃるとおり、しみじみと本当に美しいものを見た、という感じでした。
油絵っていいなぁと、また描いてみたくなりました。
素晴らしい・・・というより、心に染み入る絵画展のようですね。
師走の横浜に「ホイッスラー展」を鑑賞されて好かったですね。