『花はなぜ咲くの?』
『花はなぜ咲くの?』 西村尚子/著 日本植物生理学会/監修 (化学同人)
花が色や匂や形を駆使して自らをアピールするのは、大方は昆虫に受粉という大切な仕事をしてもらうためだ。
モチロン、虫たちには蜜などのご褒美を与えることは忘れない。中にはちゃっかり只働きさせる花もあるらしいが。
第3巻では、いつ、どのように花が作られるかという花成(かせい)の仕組み、花の形状、多様な色、自家受粉と他家受粉、熱帯多雨林での一斉開花の不思議などが取り上げられている。
シリーズを通してサイエンスライター氏が研究者をインタビュー訪問する形式は同じだが、今回は各研究者によるコラムが充実していて、研究の苦労やご本人の人となりが伺える内容で大変面白かった。
中でも驚かされたのが、はじめて知った3種類の植物についてだ。
一つ目はアンデスの高地に生えているプヤ・ライモンディという植物。
「100年間生きつづけ100年目に一回だけ花を咲かせて死ぬ」と昔から言われ、センチュリー・プラントとも呼ばれているそうだ。
開花時の高さは10メートルにもなるというが、なんと木ではなく草だというのも驚きだ。
写真を見ると、まるで電信柱のように太い。開花に向けて溜め込んだエネルギーを一気に放出しているようで壮観だ。
後の二つは「奇妙な形の花」として紹介されたもの。
寄生植物でヒドノラ科ヒドノラ属の花と、腐生植物のタヌキノショクダイという植物。
ヒドノラは何かの冗談かと思えるほど、ブサイクで怪獣じみた形をしている。まったく世の中には奇っ怪なものがあるものだ。
陽気でチープなヒドノラに比べると、タヌキノショクダイ(狸の燭台)は名前からして、ブンガク的じゃありませんか。
栄養は全て菌類から貰っているので、葉が退化しているとのこと。地上約1センチくらいのごく小さな植物だ。
タヌキノショクダイの画像は徳島県の「清流と森のナカ(花と滝) / 那賀町観光協会」さんの写真を紹介させていただいた。本書にも徳島県以外では絶滅してしまった可能性もあると書かれていた。
しかし、意外にもこの植物は深山幽谷でなければ見られないといったものではなく、暖地の雑木林にも見つかった例があるそうだ。単に小さいので見過ごされている可能性もあるわけだ。
小さな妖精の道具みたいなタヌキノショクダイ。「ぜひみなで見つけ出し、保護したいものだ。」と締めくくられたコラムに植物への思いがこもっていた。
“『花はなぜ咲くの?』” に対して4件のコメントがあります。
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>みちこさん
はじめてヒノドラの実物を見たらビックリするでしょうね。狸の燭台はホントおしゃれで、ノスタルジックで良いですね。
横浜は滅多に雪が降らないのに、今日は本格的に雪!ッて感じですね。明日まで振ったら積もるのかしら?
チョコレート作るんですか~、偉いなぁ。私は面倒臭くてたぶん一度も作ったことないです。あ~なんてことだ。
生まれたときから傍にあるのなら何でも無くても、初めて見る人は衝撃を受けるものっていう中に入るんでしょうね。
タヌキノショクダイを命名した方は、お洒落な想像力豊かな方ですね。夜には少し光って見えるのかも。
今日の横浜は雪で、昼間だというのにだいぶ積もってきました。
幸いに休日なので、サラリーマンの多くはほっとしていることでしょう。私も近所を散歩してきました後は、家でバレンタインのチョコレートを作っています。
>高人さん
こちらこそご無沙汰しております。
写真楽しんでいただいて良かったです。ヒノドラはホントB級ホラーですね。
コラムにもヒノドラが子供向けだとしたら、タヌキノショクダイは玄人向けとありました。高人さん向けでしたね。
ご無沙汰しております。
珍しい植物ですね。初めて知りました。
仰るように「ヒドノラの花」は身の毛もよだつような、あたかもホラー映画にでも出てきそうですし、反面「タヌキノショクダイ」は実に幽玄で典雅な形態ですね。いいものを見せていただきました。