『植物は感じて生きている』

植物は感じて生きている (植物まるかじり叢書 2)

『植物は感じて生きている』 瀧澤美奈子/著  日本植物生理学会/監修 (化学同人)

第2巻は植物の精巧な環境応答について。植物が変化をいかに感じ、如何に対処応答しているかだ。

細胞内の葉緑体のひと粒ひと粒は、実に敏感に光に反応して動く。

葉緑体は強すぎる光を感じると、ダメージを避けるために細胞の隅に逃げて強い光を避ける。逆に、ちょうど良い光なら、細胞の表面に集合して並び光合成に励むそうだ。

植物が光の方に動くのは日常でよく見るが、細胞内でもこんなに敏感な動きがあったとは知らなかった。

また、一つの鉢植などで一部が軒先から出ていて冷たくなっていると、そこだけ赤く紅葉していることがよくある。

植物には中枢がない。部分で感じ部分で応答しているのが、私たちとはまったく違っていて面白い。

成分を分析すると、化学肥料で育てた野菜と、有機肥料(堆肥)で育てた、いわゆる有機野菜にまったく差はありません。植物が栄養としているものが何かを考えれば、植物にとっての養分は「無機元素」だけですから、あたり前といえばあたり前なんです。化学肥料と有機肥料の本当の違いを理解しないまま、化学肥料は「悪」で有機栽培が「善」という誤った考え方は行きすぎている気がします。(中略)二つのメリットをひき出すように上手に組み合わせて使うのが一番いいんです。 (p120)

う~ん、別に有機肥料だからと言って人体に良いとか、美味しいとかいうことはなさそうだ。

有機肥料が良いのは植物にではなく、土壌微生物のために良いという事だ。土の状態がバランス良く保たれれば、カビやバクテリアの発生もなく植物も丈夫に育つ。化学肥料は植物には良いが、そればかりだと土壌微生物が食べる餌がなくなってしまい、土壌が健康な状態でなくなってしまう。

ならば、やはり有機が良いかといえばそう単純でもないらしい。

有機肥料は生産者側の使用の難しさや、最近は「環境にやさしい」というのはごみを安く処分したい人が言う傾向が強い、などの事情もあるそうだ。

一番の問題は、有機、無機を問わず肥料のやりすぎ、土壌の富栄養化であると言うのも興味深かった。

1,2巻を読んで、難しいところが多々あったが、植物研究の今を知ることができて面白かった。

ということで、3~5巻までを早速注文した。年末年始に読めたらいいなぁと思っている。

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今年はこれでブログも書き納です。

振り返ってみると、途切れ途切れでどうにか一年、という危うさでした。

拙いブログにお付き合いくださいました方々、どうもありがとうございました。

どうぞ良いお年をお迎えください。  

kyou

『植物は感じて生きている』” に対して4件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >ワインさん
    > 我家のゼラニウムが夏になると葉が白くなってしまうのはつまりそういうことだったのですね。
    ウチでもそういう葉を見ます。私もなるほどと思いました。
    でも、本によると植物は高温は蒸散などでどうにか防衛できるけれど、低温は防ぐのが難しいみたいです。知らなかったのですが、茎の中で水分が凍ってしまうと、それが溶けた時に茎の途中で空気の層が出来てしまって水の断絶がおきてしまうということがあるそうです。これは絶体絶命ですね。
    > 知識の裏付けというのは大切で、たとえば植物画だってそれがあるとないとではかなり絵の深みが違ってきますものね。
    そうですね。私もそれを痛感しています。
    知らないことだらけなのですが、植物は面白いことが沢山あるので、本を読むのは楽しいですね。難しいことは、ほとんど積み残しですが(笑)
    まあ、ゆっくりやっていきます。

  2. ワイン より:

    >葉緑体は強すぎる光を感じると、ダメージを避けるために細胞の隅に逃げて強い光を避ける。逆に、ちょうど良い光なら、細胞の表面に集合して並び光合成に励むそうだ。

    我家のゼラニウムが夏になると葉が白くなってしまうのはつまりそういうことだったのですね。

    kyouさんのお選びになる本はいつも知的な刺激のあるものばかり。考えながら読まないと進まない本というのは、自分に余裕がないとなかなか手にする勇気がでませんね。でも、kyouさんのおっしゃるように、植物のことをもっと勉強しないといけないなと私もこのところとても感じています。知識の裏付けというのは大切で、たとえば植物画だってそれがあるとないとではかなり絵の深みが違ってきますものね。

  3. kyou2 より:

    >みちこさん
    いつもコメントありがとうございます。
    > 植物の話はかなり難しいですね。今読んだだけでは理解できなくて。。。
    いつも、もっと植物のことについて勉強しなくてはいけないと思ってはいるんですが、なかなかちゃんとした勉強が出来なくて。
    でも、本を読んで知らなかった事を知るのはホントに楽しいですね。
    > 能力差ではなく、嗜好なんですよね。これからの人類には、科学による難問解決が不可欠なので、女性科学者が増えてくると良いですね。
    そうですね。性差がマイナスではなくプラスに働くような展開があるといいですね。
    話は逸れますが、以前やっていたNHKのプロジェクトXを見ていてつくづく思ったのは、一見普通のオジサン、実はすごい人というのばかりだなぁということでした。これに普通のオバサンが出て来るようになってはじめて、仕事の男女差がなくなったということなのかな、と思いましたね。

  4. みちこ より:

    kyouさん、今年も1年間、楽しませていただいて有難う。
    植物の話はかなり難しいですね。今読んだだけでは理解できなくて。。。
    ただ、動物が目だっているだけで、実際には植物が地球を支配してるんでしょうね。
    最近、科学と女性という分野を翻訳していますが、女性のエンジニアや物理学者は極端に少ないんです。生物学者や獣医は女性の方が多い。科学者は数学が必須ですが、とりわけハードに数学が必要とされる無機質的な分野になると、女性は選びたがらない。コンピューター工学も女性はすごく少ない。能力差ではなく、嗜好なんですよね。これからの人類には、科学による難問解決が不可欠なので、女性科学者が増えてくると良いですね。

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