「オルセー美術館展」
世田谷美術館に「オルセー美術館展」を見に行ってきた。
副題に「パリのアールヌーボー―19世紀末の華麗な技と工芸」とおり、絵画はわずかで工芸品ばかりの展覧会だ。
アールヌーボーは何と言っても植物の有機的な線が特徴で、しばしば過剰な曲線に滅入ってしまうところもあるのだが、今回の展示は量的にも多くないせいか、息苦しさはなかった。
印象に残ったのはルネ・ラリックの《飾りピン“芥子”》 《髪留め“はなうど”1対》で、植物の細かな部分まで再現していて、自然と技巧が絶妙なバランスだった。
また、ラリックのデザイン画が数点展示されていて、それ自体で鑑賞に堪えるほど素晴らしく、「なるほど、このデザイン画にしてあの作品が生まれてくるのか」と納得させるものだった。
同様に、《天井灯》がポスターになっているエクトル・ギマールのデザイン画も大変美しかった。
もう一点印象に残ったのは、ルイ・マジョレル&ドーム兄弟の《テーブルランプ“睡蓮”》
すっと伸びた茎の先に、丸みを帯びたオレンジ色の蓮の花が灯りになっているランプ。
一目見るなり、花びらの筋が血管のようで、心臓みたいだと思った。生きている温かみと、なまめかしさのようなものが感じられた。