『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』 中野京子 (光文社文庫)

約650年、王朝として続いたハプスブルク家の栄光と衰退を12の絵画を通して語り継いだもの。他にもカラー図版多数。

骨肉の争いや濃すぎる血の禍を、少々下世話な感じで書いてあるところが、気になる感じもあったが、肩が凝らず読める一冊だった。

作品中心ではないので、その点に踏み込まないのは分かるが、肝心の人物にしても何となく物足りない感じがあった。

でも、この本を取っ掛かりとして、自分の興味が湧いた個所を掘り下げていけば面白いだろうなと思った。

取り上げられた絵画からいくつか‥‥

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アルブレヒト・デューラー《マクシミリアン一世》

以前読んだ『ネーデルラント旅日記』に書かれていたのは、この《マクシミリアン一世》の未払い分や滞った年金を請求するための旅のこと。

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ティツィアーノ・ヴィチェリオ《カール五世騎馬像》

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ティツィアーノ・ヴィチェリオ《軍服姿のフェリペ皇太子》

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有名な遺伝の例だそうだが、「ハプスブルクの顎と下唇」は独特で、突き出た顎と垂れた下唇が特徴とのことだ。

ティツィアーノのカール五世を見ると、美化されていてあまり感じられないが、実際は極端な受け口で歯の噛み合わせが悪く、常時口を開けていたとまで言われたそうだ。

フェリペ皇太子もどちらかといえば受け口のように見える。下唇が妙に生々しい感じがしないでもない。

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ジュゼッペ・アルチンボルド《ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』

カール5世やフェリペはスペイン・ハプスブルグ家、ルドルフ二世はオーストリア・ハプスブルグ家になるが、顎や下唇はしっかり受け継がれているようだ。

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ハンス・フォン・アーヘン《ルドルフ二世像》

ルドルフ二世は、世の中のありとあらゆる珍奇なものを集めたコレクションが有名で、長らく無能なだけの奇人と思われていたが、近年は奇人ながら「当時最高の知性を備えた教養人」「学問と芸術の庇護者」と評価が変わってきた人物。

魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界〈上〉 (ちくま学芸文庫)

魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界〈下〉 (ちくま学芸文庫)

二枚の絵が使われた『魔術の帝国』という本があるようだ。これは思わず手が出る装丁か!

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エリザベート・ヴィジェ=ルブラン《マリー・アントワネットと子どもたち》

この絵が革命迫る1787年に描かれたとは‥‥何とも複雑な思い。アントワネットは仕方がないとしても、子供たちも皆、過酷な運命が待っていたようで、ここに描かれた人は誰一人平穏な人生を歩めなかったようだ。

上記の他に

フランシスコ・プラディーリャ《狂女フアナ》

エル・グレコ《オルガス伯の埋葬》

ディエゴ・ベラスケス《ラス・メニーナス》

アドルフ・メンツェル《フリードリヒ大王のフルート・コンサート》

トーマス・ローレンス《ローマ王(ライヒシュタット公)》

フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター《エリザベート皇后》

エドゥアール・マネ《マクシミリアンの処刑》

どうも尻切れトンボな終わり方だけど、まあいいか。