『悩む力』

悩む力 (集英社新書 444C)

『悩む力』 姜尚中 (集英社新書)

「まじめにトコトン悩みなさい、そして突き抜けなさい。」という人生の正攻法が語られている本。

在日としての自分は何者かという問題をはじめ、悩み多き人生を歩んできたという著者は、学生時代から大きな影響を受けたとしてマックス・ウェーバーと夏目漱石の書物をあげている。

本書で取り上げられている「私」とは何者か、何のために「働く」のか、なぜ死んではいけないのか等々の普遍的な問題を、ウェーバーと漱石を軸に解いていく。

物静かな語り口そのままの、また、少々「青い」と自認する真面目さで全編貫かれていて、心地よい緊張感と優しさが感じられた。

ウェーバーはもとより、漱石もあまり読んだことがなかったが、引用してある漱石の文章はどれも興味深く、遅まきながら漱石を読み始めようかと‥‥

ウェーバーも漱石も神経を失調しがちでしたが、それもうなずける気がします。彼の著作を見ていると、その一字一字が血のしたたるような苦行の痕跡なのではないかと感じます。たいへん深淵だと思いますし、それをやめなかった彼らのまじめさと精神力に打たれます。

そして、かく言う私も、自分を信じるしかない、「一人一宗教」的に自分の知性を信じるしかないと思っています。  (p109「信じる者」は救われるか より)

悩んでばかりもいられないのが現実で、現実と自分、社会と自分との折り合いを如何に付けていくか、どこで妥協するか、小さな決定や大きな決定の積み重ねが人生だと思う。

姜さんは人間が成長することは老成することで、それは「表層的に老成する」か「青春的に老成する」かのどちらかだという。

いつまでも青春じゃ疲れそうだが、「青春的」に歳を重ねることは、きっと長い人生を豊かなものにする一助となるだろう。

漱石は50歳、ウェーバーは56歳で亡くなっていて、気が付けば著者は彼らの年を越えているという。彼らが年下に思えず、軽いショックのようなものを受ける。と書かれていたのが印象的だった。