東野圭吾の本4冊
何年か前に『白夜行』を読んで面白かったので娘に薦めたら、娘の方が東野さんを読むようになった。
『容疑者Xの献身』の映画CMが盛んに流れているので、そういえば家にあったと何冊か漁ってみた。
『容疑者Xの献身』 東野圭吾 (文芸春秋)
TV・映画化された「ガリレオ」の原作となった探偵ガリレオシリーズの第三弾。
警察が手を焼く難事件を天才物理学者・湯川学が、彼ならではのユニークな方法で事件を解決する人気シリーズ。
あらすじは‥‥
ある日、母と娘二人暮らしのアパートに元夫が訪ねてくる。しつこく付きまとう元夫に切羽詰った母と娘は、元夫を殺害してしまう。
呆然としていた彼女たちに救いの手を差し伸べたのは、隣に住む男だった。
その男は高校の数学教師で、密かに母・靖子に思いを寄せていたのだった。
彼は完璧な論理的思考によって次々と母子に指示を出し、彼らを安全地帯へと導いていく。
警察は調べれば調べるほど、犯人にたどり着くことが出来ない‥‥。
母子を救った男こそ、変人ガリレオこと湯川学の大学の同期で友人、湯川が「本物の天才」と呼ぶ、天才数学者・石神哲也その人だった。
テンポよく一気に読めて、文句無く面白い。
湯川と石神の天才同士の戦いが醍醐味で、湯川が石神の心情を察するところが感動的だ。
石神の「献身」という一方通行の思いは痛々しく、その限界はあまりにも切ない。
映画は見ないと思うが、観客は石神には泣かされるのだろうな。
ガリレオは福山さんで当たり前として、石神が堤さんというのはちょっと意外だった。
本を読む限りでは石神は、大学時代「ダルマ」とあだ名されていたり、高校では柔道の顧問をしていたりで、ずんぐりむっくりでイケてない。
風貌は、カンニングの竹山さんとか連想していた。なのに、堤さんじゃカッコ良すぎじゃん?
『放課後』 東野圭吾 (講談社文庫)
女子高生の潔癖で大胆なところ、自意識過剰で不安定な心理が軸となって、主人公の私をはじめ、大人たちを翻弄するところが面白い。
細かなヒントや暗示がさりげなく散りばめてあって、読者にあら?と気づかせてくれる。
トリックまたトリックで最後のページまで気が抜けません。
あらすじは‥‥
成り行きで私立清華女子高等学校の数学教師になり、アーチェリー部の顧問もしている私。
学校というところは分からないことが多すぎる―これがこの五年間の感想だ。
だが実は、最近一つだけはっきり分かっていることがある。
それは、私のまわりに私を殺そうとする人間が存在するということだ。 (p11)
そんな折も折、私と教え子は学校の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒死しているのを発見する。
そして犯人も見つからぬまま、またしても運動会の最中に殺人事件が起きる‥‥。
女流推理小説家の私は、編集者で友人の萩尾冬子から紹介されたフリーライターの川津雅之と付き合っていた。
しかし、出会いから二ヶ月ほどたったある日、彼は惨殺され海に浮んでいるのを発見された。
私が彼の遺品を宅配便で受け取ると、空き巣が入り、その中からある資料が盗まれた。
そして彼と接点のある人間が次々と殺されていく。彼らの間に何があったのか? 盗まれた資料には何が書かれていたのか?
川津の死を切欠として、私と冬子は死の真相に迫っていく‥‥。
『宿命』 東野圭吾 (講談社文庫)
和倉勇作と瓜生晃彦は共に優秀で、小学校以来のライバルだった。
しかし、リーダー的な存在で人気者の勇作は、どんなに努力しても勉強も運動も大人びて孤高を貫く晃彦にけして勝てなかった。そんな関係が小学校を卒業しても何年も続いた‥‥。
今、和倉勇作は刑事としてある事件を捜査していた。
被害者に刺さっていたボウガンの矢は、瓜生工業の前社長の遺品で、管理者はあの瓜生晃彦だった。
勇作は事情を聴きに瓜生邸を訪れた。そこで彼を迎えた晃彦の妻は、あろうことか勇作の初恋の人、美佐子だった。
4冊ともすいすい読める。特に『容疑者Xの献身』『放課後』が良かった。『11文字』はイマイチ。
『11文字の殺人』の解説を宮部みゆきが書いていて、そこで東野圭吾を“ガッツあふれる体育会系作家”と称していた。
なるほど登場人物は、良きにつけ悪しきにつけ兎に角一途に頑張る、目的の為にひたむきに努力する、というような人物が多いような。文章も簡潔でくどくどした装飾は一切無いし。
宮部さんの「体育会系」との指摘で、体育会系要素が殆んど無い私は「東野圭吾はたまに読むには良いけど、基本的に合わないなぁ」と感じていたことに大いに合点がいったのでした‥‥。