夢から教えられたこと

見知らぬ者の墓 (創元推理文庫)

『見知らぬ者の墓』 マーガレット・ミラー/著  榊優子/訳 (創元推理文庫)

マーガレット・ミラーを続けて読んだが、『ミランダ殺し』はブラックユーモア、『狙った獣』『心憑かれて』は異常心理、『見知らぬ者の墓』は謎解きもので、私はこれが一番好きかな。

どれもヒッチコックあたりの映画を見ているような、恐いながらも品のよさがあって楽しめた。

さて、本書のあらすじはというと、

何不自由なく暮らす若妻のデイジーは、奇妙な夢に悩まされていた。

“そう、わたしはうちのお墓がある墓地の下の浜辺を散歩していたのだっけ。プリンスと一緒に。するとふいにプリンスが断崖の上に姿を消して唸り声が聞えてきた。口笛を吹いて呼んでも戻ってこないので、あとを追って小道を登っていくと、プリンスは墓石の傍らにすわっていた。そして墓石にはわたしの名前が刻まれていた。デイジー・フィールディング・ハーカー、一九三〇年十一月十三日生まれ。一九五五年十二月二日殺害され‥‥と”(p45)

今から四年前に自分は死んでいた。一体、十二月二日に何が起きたのだろう?

デイジーは、ひょんな事から知り合った私立探偵スティーブ・ピニャータと共に、問題の一日の真実を突き止めていく‥‥。

可憐でどこか頼りなげなデイジーに対し、母親のアダはとても強いオーラを発していてデイジーを支配しているように見える。

彼女の夢は、どこか心の奥で燻っていた閉塞感から生まれたものかもしれない。

そう、たしかにわたしは大切にされている。大切にされているということ自体には何ら問題はない。問題はジムや母のような手強い二人の関心を一身に集めていると、次第に自主性が失われ人を愛することができなくなってしまう点にある。(p324)

これは読んでいてハッとさせられた。いつだったか友人が私の事を、一生懸命なあまり子供を管理しようとする気持ちが強すぎる、それで疲れ果ててしまうのだ。というような事を言ってくれたことがあった。以来、少し気持ちを切り替えて楽になることができた。

なるほどそれに対し、小説のアダは管理しなければならない理由があったということか‥‥。

夢は忘れてしまった現実の欠片で生み出される。夢は奇妙なギフトだと思った。