やっと入選
実家にムベの小さな棚がある。
去年の10月、このムベを描きあげて「国立科学博物館主催第24回植物画コンクール」に応募した。
恥ずかしい話だが4回落ちて、今回5回目でやっと入選することができた。
植物画を描き始めてから、このコンクールの入選を一つの目標にしてきたので、やっとだなぁという感じだ。
毎年春に上野の科学博物館で、コンクール入選作品展をやっているのは知っていたけれど、いつか自分の作品が展示されるときに見に行こうと思って、ずっと建物の前を素通りしてきた。
やっと今年、見に行けることになった。
コンクールは小学生の部、中・高校生の部と一般の部があって、私は一般の部への応募。
一般の入選作品数は18点。今回は準佳作でぎりぎりだった。
ムベはアケビ科のつる性の木で、4月から5月に花が咲き、花が終わると青い実が付き、10月から11月に10センチくらいの赤紫色の実になる。
《ムベ 2007.4.11》
4月から花の下描きを始め、実を描き加えるつもりだったので予めスペースを空け、花を描き進めて実が熟すのをずっと待った。
ところが、今年はどういうわけか実のなりが悪く、8月に確認できたのは小ぶりの3個だけ。どうにか絵になるのは一つくらいだった。この時点で、今までの苦労も水の泡か~と落ち込んだ。
10月末の締め切りもあるので、10月の初めに大きさも色づきも進展しないと諦めて実を取り、描き加えた。
本当は実の断面図なども描きたかったけれど、実があまりよくなかったので断面図を入れるのは諦めた。これが一番心残りだった。
水彩画は失敗したら終わりだ。少なくとも植物画は、失敗が「味」になることはないと思う。
私は描くのが遅いので、少しずつ理想の完成像に近づけていくのだが、気力はそうそう続かない。
これで完成、終わりにしよう。という時は「やっと解放される!」といった感じだった。別に誰も束縛してないけどね。
何と言うか、紙の上にだんだん自分の描いた植物が「存在」してくる、その実感が、植物画を描いていて一番嬉しいことだ。
展覧会の期間は、以前から見たいと思っていた「ダーウィン展」があるので、一緒にコンクール作品展も見てこようと思う。
植物画は、如何にリアルに描いているかや、正確さをだけを見るのではつまらない。
作者が主人公である植物の何に惹かれたのか、何に興味を持ったのかを感じながら、植物って不思議だな、美しいなと、見ていくのが私には楽しい。
実際の植物は、それだけで完結しているが、植物画は人と植物の合作のようなものだと思っている。
「国立科学博物館」
植物画コンクール入選作品展 (期間)4月22日~5月11日
過去の入選作品は筑波実験植物園のHPで見ることができる。
順次新しい作品が追加されていくが、私の作品が載るのはまだまだ先だけど、ちょっと楽しみ。
「植物画ギャラリー」
http://www.tbg.kahaku.go.jp/education/contest/gallery/index.php