現代凄腕絵師腕比之図

「アートで候。会田誠 山口晃展」を見てきた。

現代アーチストは全くと言っていいほど知らないが、そんな私でも“これは見たい”と思う、今最も注目が集まっている御二人による展覧会だ。

山口晃氏と会田誠氏の作品はこちらのサイトで見ることができる。

「MIZUMA ART GALLERY」

http://mizuma-art.co.jp/news/aidayamaguchi_ueno_07_j.htm

会田誠作品

「ジューサー・ミキサー」は最後の方にあります。

http://mizuma-art.co.jp/_artist/aida_j.html

山口晃作品

http://mizuma-art.co.jp/_artist/yamaguchi_j.html

兎に角、会田氏の凄まじさに打ちのめされたといった感じ。

「大山椒魚」314.0×420.0cm、「ジューサー・ミキサー」290.0×210.5cm、「滝の絵」419.0×252.0cmの大作で、その迫力と衝撃は相当なものだった。

「大山椒魚」は2人の少女が、大山椒魚と戯れている図。

少女のしなやかな白い肢体と、大山椒魚の黒く突起のある皮膚とのコントラストが絶妙。

一見天真爛漫に性を晒しているような少女が、とてつもなくインモラルな雰囲気をかもし出している。

それはスクール水着を着た大勢の少女たちが、思い思いのポーズで滝の周りに配置された「滝の絵」でも同じ。

人工的な明るさが隠微ささえも払拭していて、確信犯的な巧さに脱帽。

会田氏の描く少女は、何も考えていないような無機質な顔にも見えるし、大人には理解できない別ルートの考えで頭が一杯のようにも見える。

感情は見えないが、だからといって本人は不愉快というわけではない、そういう今どきの少女たちの顔かもしれない。

「ジューサー・ミキサー」は画面いっぱいに何百、何千という少女が詰め込まれたジューサーのガラス容器部分が描かれている。

しかもスイッチ・オンとなったらしく下の方は血の海となっているという図。

実に様々な格好をした少女が、しっかりと描き込まれているのにただただ驚嘆した。

血の海に漂う少女はこの未曾有の大虐殺に、我関せずの風情‥

‥はたと思った。そうだこれは「少女の形」をしているから、鑑賞者は驚き、不快感を持つのだ。これは均一に形良くつくられた「いちご」かなんかなのだ。

「いちご」に阿鼻叫喚は似合わない‥などなど、私の頭はかなりパニクッタ。

作者は無個性な均一性に嫌悪感を抱いているのだろうか。

しかし当たり前だが、実に巧く描かれている作品だ。これが作品でよかったと思った。

密かに描かれるには、恐すぎる。

ただ、今回展示されていない作品の中には、どうしても受け入れられないものもある。

明るい残虐性を受け入れられるほど、若くも強くもないということか‥。

山口晃氏は伝統的な絵巻や洛中洛外図、武者絵を現代版にしたような作品だ。

圧倒的な量の情報が描かれていて、且つそこにユーモアやウイットが盛り込まれ、

時代もオーバーラップさせて、鑑賞者に「これでもか」と目の悦楽を与えている。

身近なところで目にした作品

・テレビや電車のポスターになった「江戸しぐさ」

http://www.ad-c.or.jp/campaign/self_area/04/

・「三越」の広告

http://www.pressnet.or.jp/adarc/ex/07/46mitsukoshi.html

あれだけ沢山のものを描いても整然とした印象を与えるのは、線や色彩が超人的に整理統合されているからだ。直に作品を見るのは初めてだったので、その仕上がりの見事さに圧倒された。

印刷では伝わらない美しさは何と言ってよいか‥。

印象に残ったのは「當丗おばか合戦」全体としては金雲たなびく合戦図、だが中央には大きな骸骨が長刀を振るっていて、どうやらクレーン?大型機材のようなもので操っているらしい。

鎧姿の侍も馬に弓の者、バイクに乗っている者、サラリーマン、今どきの女子学生など混ぜこせ。

白い布で囲われた主将がいる陣営に、何やら外からお偉いさんが視察か見物に来た感じ。足軽侍はかしこまって「どうぞこちらへ」など‥‥

中央の長刀骸骨はブリューゲルの「狂女フリート」みたいに見えた。

そう思っていたら、幾つかのブリューゲル作品をコラージュした作品があった。

やっぱり好きなのかな? などと思ったり。

展示の最後の方にあった「すずしろ日記」は墨で壁新聞風?に文字と絵で描かれた楽しい作品。

山口氏は安心して楽しめる、そのサービス精神がありがたい。

中に、北鎌倉のS邸を訪ねたとあるのはもちろん澁澤龍彦のお宅。

会田誠氏と山口晃氏はホラー・ドラコニアでも表紙を競演している。

獏園 (ホラー・ドラコニア少女小説集成)

菊灯台 (ホラー・ドラコニア 少女小説集)

会田誠氏の「ジェローム神父」は不快に思われる方も多いので止め。

山口晃作品を目当てに足を運んだけれど、会田誠作品の衝撃が強くて冷静に見られない感じがあった。

もっと時間をとって出かければよかったと後悔するも遅し。

現代凄腕絵師腕比之図” に対して5件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >みちこさん
    ご心配なく、誤解していませんよ。
    いつもしっかり読んでいただいて、コメント書いてくださって、実は楽しみにしているんです。
    突っ込んだコメントと書くことは、とても勇気のいることだということも、理解しているつもりです。
    書かれたこと、色々考えさせられる内容ですね。私もしっかり受け止めたいと思います。

  2. みちこ より:

    kyouさんが誤解されると申し訳ないので、もう一度書かせてもらいますが、私はkyouさんがブログにアップしたことを怒っているわけではありませんからね?むしろ、現代の世相を一つ教わって良かったと思います。
    私がショックを受けたのは、会田氏よりも、むしろ、それを支えている人々の存在です。会田氏は、描きたい物を描けばよいでしょう。しかし、産経新聞社、日本美術教会が後援して、上野の森美術館という場所で、展示する、ということに、何とも言えない感情が出てきてしまうんですよ。
    kyouさんも例に挙げていらっしゃる村上隆氏もそうですが、受ければいいの?売れればいいの?ということなんです。
    もし、会田氏の作品が、秋葉原で人気の漫画なら、別に何も感じません。
    先日、タイの児童買春についての記事を読んだのですが、警察が取り締まりを強化すれば、組織は地下にもぐります。闇組織になると、なおさら、子どもは地獄に陥る。
    それを読んで、つくづく、たとえ馬鹿馬鹿しいいたちごっこであっても、警察が追いかける、連中が一時鳴りを潜める、また出てくる、という非効率的なパターンが、現実的にはベストなんだ、ということなのかな、と思いました。
    描かれている少女たちと同年代の少女たちは、この展覧会を見てショックを受けても、声を上げる手段を持たないでしょう。それを思うと、本当に可哀相だと思うんですよ。

  3. kyou2 より:

    >於兎音さん
    >サドの表紙じゃないでしょ?
    ここまで軽く明るくオープンにしていいものだろうかと思います。
    それが現代性だとすればよほど罪深いことなのかもしれません。

    >まだ本物???という感じですね。
    同感です。私はアニメチックな村上隆も好きではありません。

  4. 於兔音 より:

    会田誠さんは、一瞬すごい!って思うのですが。サドの表紙じゃないでしょう?といいたいです。澁澤さんがお認めになるだろうか。。。まぁいいんですけれど。好みの問題ですので。
    ただ、一目見て本物!と思う人もいますが会田さんについてはまだ本物???という感じですね。

  5. みちこ より:

    日本は児童ポルノに甘すぎるという批判が出ていますが、肢体を切断された少女が犬の首輪を巻かれている絵が、気鋭の現代美術家の作品ですか。。。はああ。
    少女達が性の商品として扱われないようにという各方面の努力も空しいですね。
    昔からこの手の物はありふれているわけですが、公に晒してはいけないものと認識するくらいの常識はあったと思うのですが。
    実際、こういう作品に触発されて、様々な犯罪が起こるのですからね。芸術は芸術。世間の人がどう受け止めるかは関係ない、という姿勢はいただけません。

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