思ったほどでは‥
今日は『遺失物管理所』 『ぼっけえ、きょうてえ』 『悪魔はあくまで悪魔である』三冊まとめて感想をUP
『遺失物管理所』 ジークフリート・レンツ/著 松永美穂/訳 (新潮クレスト・ブックス)
鉄道会社に勤めるヘンリー・ネフは、どこか茶目っ気のあるお坊ちゃま育ちの若者。
その彼が、会社の引込み線ともいえる「遺失物管理所」へ異動になった。
保管されている膨大な数と種類の失くし物、またそれを探し様々。
職場には、老いた父親の面倒を見る同僚や気になる人妻がいて、日々の仕事を淡々とこなしていた。
もとより出世競争に興味のない彼は「遺失物管理所」に今までの仕事では感じなかった楽しみや充実感を感じ始める‥‥。
鉄道会社の人員整理の問題、ドイツ社会の人種差別や若者の暴走なども折り込まれているのだが、どうも盛り上がりと緊張感に乏しいような。
私にはどうも主人公の人物像が見えてこず、魅力も感じなかった。
「遺失物管理所」という切り口なら、宮部みゆきあたりだったら、爽やかなオチのある物語を2つ3つ簡単に作れそうな気もする。
そういうエンターテイメント性の強い小説ではないとしたら、何かもっと詩的な美しさがあるとか、人間性の深みがあるとかなんとか‥‥。
まあ、私が読み取れなかったということだろうな。
でも、読んでいるときにものすごく面白くても、すぐ忘れて記憶に残らない小説もある。
それに反して、読んだそのときは何だかヌルイなぁ、大したことないなぁと思っても、何だか後々まで記憶に残っている小説もある。ヘンリー君、キミは後者なのか!?