巧みの技でしょ。
都筑道夫恐怖短編集成Ⅰ『悪魔はあくまで悪魔である』 都筑道夫 (ちくま文庫)
41編のショート・ショート集。
よくぞ次から次へと味付けの違う一品が出てくるなぁ、と感心した。
SF的なものから、幻想的なもの、怪談めいたもの、人情味のあるもの、どれもこれも美味しくいただけること請け合い。
すべて昭和40年代後半から50年にかけて書かれた作品で、そのせいか昭和の懐かしいような感じがあった。
Ⅰ~Ⅲまであるようなので、是非読んでみたい。
「ぼっけえ、きょうてえ」は、ウエットな恐怖。こちらはどこかドライな恐怖で、軽みがある。
女流作家はどちらかというと生々しい感情の描写が多いような気がする。たまに読むのはいいけれど、ドロドロの愛憎劇は飽きる。
作品以上に不気味だったのは、山藤章二の挿絵。
各作品に一つずつあって、登場人物の心理を象徴的に描いていたり、キーワードになる物を斬新に描いていたり。
挿絵を見ているだけでも充分に面白く、原画を見てみたい気がした。
「漂う顔」というラーメンの器の中に女の人の顔が映る、という作品で思い出したが‥。
私も、小さいころお味噌汁を飲むと、最後の方で汁だか、器の底だかに何か映るので怖かった。
それが自分の顔だと分かった後でも、何となく怖く嫌なものだったなぁ。
“巧みの技でしょ。” に対して2件のコメントがあります。
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>於兎音さん
『茶碗の中』知りませんでした、面白そうですね。
都築さんの名前は確か、高橋克彦が尊敬している作家で挙げていたので知ったのだと思います。
プロの作家の底力のようなものを感じました。作品の質を保ちながら次々に生み出し、しかも多くの読者を納得させ楽しませる。並大抵の才能じゃないですね。
>「漂う顔」というラーメンの器の中に女の人の顔が映る、
『芥川の茶碗の中』を、思い出しますね。
都築さんは好きな作家です。本当のエンターテイメントとは何かを教えてくれますね。