没後20年

澁澤龍彦 幻想美術館

『澁澤龍彦 幻想美術館』 巌谷國士/監修・文 (平凡社) 

北浦和にある埼玉県立近代美術館へ「澁澤龍彦 幻想美術館」を見に行った。

澁澤龍彦のヨーロッパ旅行を、予備知識あり過ぎる旅人の「確認の旅」だと、何かで読んだことがあるし、カタログ(上記の書籍としても購入できる)にも同じような記述があった。

この「澁澤龍彦 幻想美術館」もまた、澁澤愛読者にとっての「確認の展覧会」であると思った。

愛読者なら誰でも知っている澁澤好みの絵画やオブジェ、澁澤本人や文人、画家など交友のあった人々との写真。

それらは書物の上で慣れ親しんできたものだ。だが今回は、一つ一つ確かに目の前に存在している。

作品を見ていくと、澁澤龍彦という人はつくづく目の人だなぁと思う。

具象的なイメージを元に、それらが解体され、結合、変質を繰り返し、純化された幻想世界を作り出す。総じて言えば、そういう絵画を偏愛する人のように思った。

展示は、幼いころに読んだ絵本などから始まって、サド関係、暗黒舞踏、アングラ、西洋美術(マニエリスム、シュルレアリスム)、博物学、日本美術、晩年へと続く。

私はどちらかというと、晩年の緩やかな文体のエッセイや、西洋と中国・日本の古典が融合したような幻想小説が好みだ。

だから60年代の暗黒舞踏やアングラには全く興味が無い。写真などをみてもどうも奇異さだけが目に付いて、本質に迫る気力も湧いてこない。実際に見たことが無いからなのかもしれないが‥。

どうも生身の人間は生々しくていけない。平面の、本の上でのことなら良いのだが。唐十郎の本なら読んだことがある。

嬉しかった展示は、植物画でソーントンの「フローラの神殿」があったことだ。

独特な雰囲気をかもし出す「背景のある植物画」は幻想的だ。細部のリアルさやテクニックだったら現代の作品の方が上かもしれないが、植物の持つ魔力ともいえるような生命力を感じさせる点では「フローラの神殿」に勝るものは無い。奇跡のような作品だと思う。

澁澤で植物画と言えば『フローラ逍遥』を挙げずにはいられない。25種類の花を取り上げているが、その中にチューリップがある。

そこに、「コドモノクニ」という児童雑誌に載っていたチューリップの童謡が大好きで、挿絵は武井武雄だったと書かれている。

実はその「コドモノクニ」が、この展覧会の最初の方に展示されており、かわいいチューリップの挿絵も見ることが出来た。

繊細な線で輪郭が描かれ、花には美しい色がついていた。

ルドンの版画、スワーンベリの線もそうだが、線への嗜好や花への思いが、終生変わらずにあったのがとても印象的だった。

PS:偶然にも少し前にそちらに引っ越したNさん、ご縁が続きますね。展覧会お付き合いくださって、ありがとう。

没後20年ということで、色々企画展が開かれているよう。

埼玉県立近代美術館 「澁澤龍彦 幻想美術館」

http://www.momas.jp/3.htm

鎌倉文学館 「澁澤龍彦 カマクラノ日々」

http://www.kamakurabungaku.com/exhibition/index.html

ギャラリーTOM 「澁澤龍彦の驚異の部屋」

http://www.gallerytom.co.jp/ex_page/ex.html

「神保町ドットコム  書斎訪問 澁澤龍彦」

カタログにも載っている憧れの書斎の全貌が‥‥お気に入りのサイトです。

http://www.jimboucho.com/study/001/index.htm

没後20年” に対して1件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >弥勒さん
    おお、行かれたのですね。好き嫌いの分かれるところですよね。
    澁澤龍彦が好きなものを展示していると思いますが、
    私自身もそれを全部好きな訳でもないんですよ。
    これは好きだけど、これはどうもね~って思うものもよくあります(笑
    確かに「これなに?」って考えさせられるものが多いですね。
    澁澤さんは文学者だからかもしれませんが、メッセージがいっぱい詰まった、読み解く作品がお好きかもしれませんね。
    どれか一つでも、弥勒さんが強く印象付けられた作品があればよいのに、と思います。

  2. 弥勒 より:

    TOMへ行ってきました。
    渋澤龍彦ファンが行く展覧会なのですね。
    入った瞬間は、「え?これなに?」。
    そこでいろいろと考えました。

  3. kyou2 より:

    >たかねさん
    聴講されたんですね。「堪能しました。」と言う言葉にどれほどだったのか現れていて、羨ましいことです。
    今回の展示は本当にきめ細かく心配りがされていますね。もし澁澤さんが生きていらしたら、どういう感想をもたれたかと想像します。
    たかねさんのコメントを読んで、巌谷さんは面白いものが大好きな澁澤さんに面白がってもらう為に努力されたのではないかと思いました。
    展示作品で印象に残ったのは、植物画の他に、野中ユリ、池田万寿夫のコラージュ、美学校のポスター(だったと思う)素晴らしい教師陣、バルテュス「嵐が丘」、最後の部屋の、筆談のメモ、『高丘親王航海記』の地図や原稿など、きりが無いですね。

    色々な人との交流も「来るものは拒まず」の感じがあるように思います。小柄なのに大きい人ですよね。
    不思議と才能のある人が澁澤さんの周りに集まる。それでもブレないで中心に在り続ける澁澤さんてすごいなぁと思います。

  4. kyou2 より:

    なるほどね。偶然じゃなくて、そう見えるけど本当は必然。それが引き寄せなのかもしれませんね。
    「心に強く存在するもの」面白いですな。散漫な性格の人は、ずっと散漫なまま、一つに固執する人はそれを元に集まってくるからさらに固執が強化される。そんなスパイラルを思い浮かべました。

  5. たかね より:

    二回目の展示と巌谷さんの講演、昨日(6日)行ってきました。
    マニエリスムからの展示は見ごたえがあります。文章も巌谷さんがほとんどお一人で書かれたとの事で、準備も1年近く、個人蔵の絵を借りたりだとか、その努力が反映された展示だと思います、時間があまりなくて1時間弱しか見られなかったのですが。講演は2時間の予定をオーバーし3時間以上もお話とスライドを堪能しました。澁澤さんはまったくねちねちした所がなく明るい方で強固な意志を持っていた方なんだなぁとリアルでした。60年代は三島の影響と呼応に応じてた部分が強いそうで70年代から旅と博物誌へ目先が変わったり、私も文章自体は晩年(といっても50代・・・)のものがやはり一番好きなのですが。土方とは全く違うタイプだから生涯友達だったのかしら、なんて思いました。鎌倉や渋谷にも行ってみたいです。

  6. みちこ より:

    ううーん。澁澤について何も知らない私がコメントできる場ではないのですが・・・彼の存在を知ったのも、kyouさんを通じてですしね。それにしても、本当に、あなたと感性の会う方のようで、その事実だけでも、素晴らしいな、と羨ましいですね。今、YouTubeのSecretという映画を見ていたんですが、ネタばらしはしたくないのですが、attraction(引き寄せ)が、この宇宙の法則。心に強く存在するものが引き寄せられる。良い悪いに関係なく。確か、澁澤の本を知人に貰いましたよね?そういうことです。

  7. kyou2 より:

    >monksiiruさん
    実は連休前に行ったのですが、感想が遅くなって。
    ずいぶん借りてきていますね! ワクワクものですね。
    『高丘親王航海記』は最後胸がつぶれるような哀しみがあります。でも重苦しくなく、どこか軽々と飛翔している精神が、シブサワさんそのもののようだと思います。

    あんな書斎があったら、どんなに幸せだろうと思っちゃいますね。
    あのサイトの乱歩の土蔵も有名ですよね。以前、土蔵を公開する機会に見に行ったことがありますが、入り口から覗けるだけで中には入ることは出来ませんでした。

  8. kyou2 より:

    >弥勒さん
    「TOM」には行ったことがないのですが、サイトの写真を見る限りいい感じの美術館みたいですね。 楽しめるといいですね。
    澁澤は芸術家との親交が本当に広く深いです。亡くなったときも彼へ沢山のオマージュ作品がおくられました。

  9. monksiiru より:

    >kyou2さん、こんにちは。
    澁澤展行かれたのですね。
    展示を見てから図書館で澁澤本ばかり借りて読んでいます。古い蔵書本があるのが嬉しいです。「フローラ逍遥」「夢の博物館」「高丘親王航海記」「城」「美神の館」・・・。買ってきた解説本と比べながら読むのが楽しいひと時なのです。
    上のリンク先の書斎訪問、早速見ました。
    花咲く乙女たちが当たり前のように飾ってあっても見劣りしなくて違和感のない空間が素晴らしいと思います。書斎の本がたくさんあっても毅然としたものを感じるのは全ての本がまだ澁澤氏とともに時を刻んでいるからなのでしょうか。憧れの書斎、動画も全てみて堪能させていただきました。ありがとうございます。
    鎌倉文学館も機会があれば足伸ばしてみたいと思います

  10. 弥勒 より:

    これを読んで、ギャラリー「TOM]っての、近々行ってみようと思いました。おそらく、電車で渋谷に出る5月9日です。

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