創造力の連鎖
招待券を貰ったので「NHK日曜美術館30年展」へ行って来た。
と言っても、もう大分経つけれど。
なんでもすぐレポート書ける人ってスゴイな、ブログを書いていると自分の瞬発力のなさをつくづく思う。
では持久力なら、と言いたいところだがこれも覚束ない‥‥なんてどうでもいいか。
展覧会は馴染みのある作品が多かったので、あまり期待して行ったわけではなかったけれど、これが嬉しい誤算、内容の充実したとても面白い展覧会だった。
展示は「夢の美術館」「作家が作家を語る」「アトリエ訪問」「知られざる作家へのまなざし」に分かれている。
「夢の美術館」「作家が作家を語る」では、作品の横にTV出演したゲストの言葉が掲げれれ、双方相まって実に面白かった。
文学者や音楽家、美術家の言葉は、けして安易なものではなく、作品と対等の重さにこちらの気持ちも引き締まる気がした。と同時に作品を2倍にも3倍にも味わえるように思った。
展示室内で当時のTV映像も流されて、椅子もあり休みがてら思わず見入ってしまう。
遠藤周作の一見ひょうきんな厳しい顔、今東光の食えない和尚って顔が懐かしかった。
「新日曜美術館」はあまり見てはいないので何とも言えないが、昔の番組は質が高かったなぁ、というのが率直な感想。
カタログもとても読みでがあって、満足満足。
印象に残ったのは、武満徹の語るルドンと田村隆一の語るゴヤ
・ 武満徹の語るルドン
ルドンの<閉じた眼>が切欠となって曲を書いた時の思いを語ったもの
「目を閉じて」(部分)東京展での展示無し
‥‥「閉じた目」というのが、僕に、すぐに「開かれた耳」と言う言葉を連想させたからです。
僕も作曲家、つまり最初の聞き手として、ルドンと同じように、見えていないものを見たいし、聞こえない、いま聞こえていない音を聞きだしたい。何か音を組み合わせて音楽を作るっていうんじゃなくて、音、何か「ある音を聞きだしたいなっていう気持ちが強いですね、‥‥」
「おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」
「目は奇妙な気球のように無限に向かう」(部分)東京展での展示無し
ルドンのああいうまなざしを見ると、何を見てるのかな、って自分にいつも問いただしているんだけれども、たぶんこれは「記憶のまなざし」ではないかと思うんですよ。人類、人間が地上に生まれてきて最初に見た世界の風景とか、いわば生命の神秘っていうか。
(引用:カタログ、掲示より)
創造力の連鎖、それをなしえる人たちの素晴らしさに、ただただ畏敬の念を抱いた。
・ 田村隆一の語るゴヤ
『戦争の惨禍 №15「もう助かる道はない」』
‥‥湾岸戦争のあれはね、ただ映像に映ったリアルなんです。起こっていることをほとんど同時的に映像で流す、その効用はたいしたものでしょう。しかし、そのリアルに問題があるんだな。ただ映っているのだけがリアルじゃないんですよ。ゴヤの表現によって、僕たちの心の中に眠っていたものが目ざめるということなんですよ。リアルっていうのは。
ゴヤの絵を見たときに、一人一人が心に抱く、確固たる手ごたえのある感情‥‥人間の残虐さや愚かさ。
これはテレビで現在進行形の戦争を、風景を眺めるように見ることに勝る。人間にとって、平和にとって意味あるものは前者だ。
最後の展示の「知られざる作家へのまなざし」では、田中一村、高島野十郎の作品を見ることが出来たのが何よりだった。
この日は、この後に東博に行ってお目当ての「特集陳列 博物図譜-写生とそのかたち-」で関根雲停の魚を見てきた。
以前ブログに書いた 『江戸の動植物図 知られざる真写の世界』ではじめて知って、是非実物をと思っていたので、タイムリーだった。
もう一つ、大収穫は月岡芳年の「近世人物誌 やまと新聞付録」が見られたこと!10枚以上あったろうか、鮮やかな浮世絵がずらりと並んでいたのには感激した。
常設展をゆっくり見て回るのは何年ぶりだったろう。
ここは仏像、絵画、工芸品、浮世絵などなど、本当にいいものが沢山ある。たまにチェックしないといけないなぁ。
もうすぐ東京展は終わってしまうけれど。
「NHK日曜美術館30年展」
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm
「東京国立博物館」
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00
“創造力の連鎖” に対して4件のコメントがあります。
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> みちこさん
私も武満さんの曲はTVで聞いた程度、もともとあまり音楽も聴かないほうですから(笑
でも、武満さんのCD聞いてみたくなりましたよ。
川畠成道さん知りませんでした。ごめんなさい。
> 目が見えないために、普通の人が感じられない音の世界を彼は感じている、と私は思っています。
すごいですね!いいコンサートが聴けそう。絵でも音楽でも、直にふれる事って大切ですね。
五感をフル活用して聖なるエネルギーを浴びてきてくださいね。
とっても楽しまれたようですね。
武満徹さんの曲は、実は、聞いたこと無いんです。(たぶん)というのも、彼の曲には実に不可思議なシンクロニシティが起きる。それも、結構不気味な場面で。という風に2度ばかり実例を聞いたものですから、怖くなってしまってね。
彼は、普通の人が聞けない音を、実際に聞いていたんじゃないでしょうか?
川畠成道というバイオリニストをご存知?
来週、川崎のコンサートに初めて行くんですが、或るとき、ラヂオから彼の演奏が流れてきた瞬間、天から降ってきた!と思ったんです。そういう音なんですよ。皆がそう感じるらしくて、彼の演奏は、天国から来る音楽とか、天使の音楽とか表現されているようです。
実は、彼は、盲目なんです。
目が見えないために、普通の人が感じられない音の世界を彼は感じている、と私は思っています。
貧乏な私にチケット代は高価でしたが、今現在生きている芸術家の音をそのまま今聞く、という以上に生きていて良かった、と思うことはありませんものね。
>monksiiruさん
芳年は偶然だったので、ラッキーでした。私も「仏像展」行こうかなと思っています。秋は色々目白押しです~
人魚や河童のミイラって、以前本で見たことがあります。ニセモノ博覧会的な内容だったと思います。面白いですよね。
あと行きたいのは、太田記念美術館の9,10月の「歌麿と栄之」です。栄之が好きなんです。
11,12月は「英山と英泉」これも行きたくなりますね。
kyou2さん、いつもありがとうございます。
月岡芳年の「近世人物誌 やまと新聞付録」東博に出ていたんですか!kyou2さんご覧になられたんですよね。良いなー。
東博の仏像展にゆこうと思っているので時間があれば常設展も見られるといいのですが。そうそう、国立科学博物館では「化け物の文化誌展」はじまりますよね。人魚や河童のミイラが出るそうで楽しみです。