紅葉はリストラだ。

「植物」という不思議な生き方

『「植物」という不思議な生き方』 蓮実香佑 (PHP研究所)

植物と人間、あまりにも違いがありすぎて…いやいやそんな事はない。

「案外似たもの同士、お互い苦労しながら生きているじゃないか。」などと呑気に構えていると、

「う~ん、植物ってこんなにも強かでアクティブなのか?!」と、植物の底力に圧倒されたり。

読むほどに、次々と繰り出される植物の“術・策・技”は、私達の想像を絶するほど完璧で複雑怪奇だ。

また、植物ほど効率よく生き抜いている生物はないと思い、翻って人間はなんと非効率的な、浪費家なのかと呆れたりもする。

著者の蓮実さんのユーモアある語り口もとても魅力的。難しい内容を分りやすい言葉に変換して説明してくれるので有難い。

何よりも、人へも植物へも同じように、尊敬と興味を抱いている方なのだなぁと思った。

本を紹介してくれたYadayooさんもこんな方なのかなぁ、とフト想像・・・。

印象に残った植物の奇策、妙技のごく一部を書くと。

・ 病原菌が侵入した周囲の健全な細胞が一気に死滅…アポトーシス(プログラムされた死)を起こすそうだ。

敵を道連れに自爆作戦、被害を最小限に留める自殺行為だ。

細胞の死が種を保存させているわけか…何だか感慨深いな。

・ 雑草の種子は光を感じ取って発芽を開始する。だから雑草を取った後、地面に光が当たると、ここぞとばかり目を覚まして生えてくる。

取っても取っても生えてくると感じるのは、本当で、生えてくるきっかけを与えていたなんて!

・ マメ科の植物は、土中にいる根粒菌を根に誘い入れ、糖分と与える代わりに根粒菌が取り込むことが出来る窒素を頂く。共生というのだそうだ。

でも植物は、働きの悪い根粒菌には糖の供給を止め、殺してしまう。

また根が誘い込んだ根粒菌も窒素の量が充分であれば、途中で根の道を閉じて根粒菌を飼い殺しにしてしまう。

表もあれば裏もある。これが自然界の偽らざる実態だ。こんな自然界で、愛と宥和の「共生」を声高に理想に掲げる人類は、なんとも特殊な種である。あるいは、だからこそ人類は存在価値のある貴重な生物だとも言えるのだろう。神も仏もない厳しい自然界で、人間のような考えの生物が成功し繁栄していることは、まさに神の奇跡なのだ。 (P84)

・ 紅葉は葉っぱのリストラだった。

秋になり厳しい冬を見据え、落葉樹は樹全体を省エネモードにしようとする。

そのためランニングコストがかかる葉を、切り捨てることを決断をするのだそうだ。

ある時、枝と葉の間に「離層」という遮断壁を設けて、水分と養分の供給を断つ!

葉は、それでもカツカツ光合成をおこなうが、出来た糖分は行き場を失ってやがてアントシアニンという赤い色素になる。

葉緑素の方はというと「離層」により崩壊の一途をたどっているので、緑はだんだん消滅してくる。

そんなこんなで紅葉の出来上がり、ややもすれば「離層」からハラリと地上へ落ちる運命となるのだ。

は~ぁ、私はこうもハッキリと「離層」というものがつくられて、葉が落ちるとは知らなかった。

もっと緩やかな衰えかと思っていた私は、甘かった。

今年は紅葉を見るにつけ、いっそうの哀愁が漂いそうだ。

最後の章は、本来毒であった酸素を放出する植物と、それがなければ生きていかれない人類との未来の話だ。

どうも人類が滅ぶとしたら、自分で自分の首を絞めた結果ということになりそうだ。

人が人らしい特性を生かして、間違った選択をしなければいいと願う。

折角、神様に生かされている稀有な存在なのだから・・・。

紅葉はリストラだ。” に対して1件のコメントがあります。

  1. Yadayoo より:

    読んでいただいたのですね。ありがとうございます。人間は植物のことを知らなさ過ぎですね。これだけ恩恵にあずかっているのに、ちょっと恩知らずな生き物だなと反省してしまいます。それに、植物のような基本的に逃げたり移動したりできない生物が、庇護もない環境で死に絶えずによく生き延びてきたものだと、その仕組みや知恵の偉大さに感動してしまいます。先日、冥王星を惑星から外すというニュースが話題になっていました。太陽系の惑星たちが整列する模式図や模型を見るたび、なぜ地球だけに生命体が栄えたのだろうと不思議な気持ちになりました。植物は、生命体(動物)を発生させた母であり、今も養い続けているパートナーなんですよね。

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