月夜に梅の香

三の丸尚蔵館「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」の第2期の展示を見に行った。第一期の感想はこちら

どうも若冲を中心に見るので、感想もそればかりになってしまう。
今回の展示も前回と同じく6枚ずらりと並ぶ。
右から「雪中鴛鴦図」「梅花皓月図」「梅花群鶴図」「棕櫚雄鶏図」「桃花小禽図」「菊花流水図」
どれをとっても面白いけれど、中でも注目した3作品について。

 


「梅花皓月図」

30幅の中で唯一、鳥や昆虫などが描かれていない、白梅と月だけの作品。(そう見えるけれど、何か居たら教えてください)
とは言っても、この白梅が尋常でない形態であること甚だしい。
画面に縦横無尽に伸びる枝は、不自然ともいえる形を作っている。下半分に月の相似形のように円に描かれた枝、文字のような枝、見飽きることの無い複雑な形に植物のエネルギーを感じる。

描き方で一つ着目した点があった。
枝と枝に挟まれた空間を他の空間より暗くしているところ。月の上にかかった枝が顕著だ。
若冲は画面に不思議な空間を造ると思う。この表現によって白梅が存在する単一の空間に複雑な「場」を作っているような感じがして、とても面白かった。
「動植綵絵」は30幅それぞれに独創的な空間があるように思える…。

カタログの解説によると、この作品は月を除き全面が薄墨によって裏彩色されているとのこと。明るい月が画絹の色になるそうだ。

 


「梅花群鶴図」

マッタク犇くとはこのこと。というくらい重なりあった6羽の鶴。
だまし絵じゃないけれど、この絵は鶴の足のあたり、高く首を伸ばした鶴の嘴あたり、わざとアレっ?思わせるような類似表現があるように思えて楽しい。

なんと言ってもこの「輝く白」が素晴らしかった。
例によって裏彩色されたものに、表からハッチングのように一本一本描かれ、胸の辺りは斜めに交差するように網目状になっていて柔らかな感じがした。
また胸からお腹にかけて若冲はドットを散らしているが、実際の鶴にこんなのあるのだろうか?これもまた若冲のデザイン性のなせる技なのだろう・・。

今回、円山応挙の「双鶴図」も展示されていたが、応挙の鶴の方が自然な感じで、こちらの方が実物に忠実に描かれたのではないかなと思った。
特に、足先の人間の指に当たる部分(鳥はなんていうの?)は若冲が描いたものに比べて長く大きく、曲げた感じもしなやかだった。

 


「菊花流水図」

本当に不思議な絵だと思う。
構図や描法が計算され尽くしているが、それ以上に何か深遠な世界をしみじみと感じる作品だ。
苔むした岩だろうか、ちょこんといる小鳥は、まるで天空遥かにあるように菊の花を仰ぎ見ている。
作品の前に立つと白菊はそれほど大きく、美しい存在に見える。
私には、小鳥がお釈迦様の教えに心を澄まし、耳を傾けているようにも思えた。

この作品もそうだが、30幅をとおして斜めの線や斜めの構図、ジグザグ、S字、交差する形や視線!が多い。
若冲自身が複雑さを、これでもかと楽しんでいるように思えてならない。
幸運にも全期間を通して見に行ける所に住んでいるので、本当にありがたい。
色々なめぐり合わせに感謝しながら、じっくり見るようにしている。

 

「三の丸尚蔵館第40回展開催要領」

http://www.kunaicho.go.jp/11/d11-05-06.html

月夜に梅の香” に対して1件のコメントがあります。

  1. kyou2 より:

    >Takさん
    >インパクトありすぎです。
    そうですね。普通の作品では太刀打ちできない迫力ですね。
    第1期のとき同じ日に「最澄と天台」をみたのですが、
    若冲で精力吸い取られてボーっと見てしまい、後悔しきりでした。

    >一番斬新なのは「菊」
    ホント奇想天外というか、独特な世界です。
    第3期もたのしみです。
    PS:「色の文芸史」とても面白く、勉強になりました。

  2. Tak より:

    こんばんは。
    若冲以外の作品も展示されているのに、仰るとおり
    頭の中には若冲の印象しか残らないんですよね。。。
    この展覧会。
    インパクトありすぎです。

    こちらにあげられた3点
    それぞれ特徴あって甲乙付けがたい作品ですね。
    一番斬新なのは「菊」
    はっと目を引くのは「月&梅」
    そして若冲の術中にはまるのが「鶴」ですね。

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