浮世絵の極み

みだら英泉 (新潮文庫)

『みだら英泉』 皆川博子 (新潮文庫)

先に読んだ高橋克彦の『浮世絵探検』で、対談の際この小説が話題になっており、早速読んでみることに。

主人公は浮世絵師、溪斎英泉(1790~1848)  無名の英泉が、如何に今を生きている「女」を描くようになったのかを描く。

分けても英泉が春画をとおして、独自の粋で婀娜で鉄火な女を見出そうとする姿は、絵師としての意地と凄まじいまでの執念を感じさせる。

登場人物は、英泉を売り出していく版元・長二郎(為永春水)、北斎、その娘お栄、国芳、国貞、と多彩。

性格が全く異なる英泉の三姉妹の存在は、その時代の女の生き方を映していて興味深い。

長女と次女が英泉に寄せる思慕と嫉妬は、艶やかな浮世絵をみるようで、コクがあった。

浮世絵に興味のある人なら、読んで損は無い本だと思う。

春画はそれほど見る機会が無いので詳しくないが、ナルホド他のジャンルに比べ、凝ったものが多い。

浮世絵師のほとんどが、かなり力をいれて描いていることが分る。

寛政の改革後は、春本、春画の類が禁止され店頭で売られなくなったそうだが、需要が無くなる訳ではなかった。それどころか店頭に出ない分、贅沢になり色使いも自由になったという。

値段の高い春画の報酬は、単なる美人画より高く、また十分に腕を発揮できることもあって、絵師にとって魅力的な仕事なのだ。

枕絵にゴタクはどうでもいいが、アクロバティックな絡み合いと空前絶後の誇張表現は、ちょっとグロテスクではあるなぁ・・・・。

まぁ、一つの絶頂点はあることは確か。

これを描いた絵師の想像力、限界に挑戦する彫師、摺師の技量にただただ驚嘆!描いてあるモノよりこちらに驚くべき!

馬琴、種彦、三馬等々の名前が出てきたり、流行した変化朝顔の話が出てきたり、爛熟した江戸の文化や風俗の描写が鮮やかだった。

浮世絵の極み” に対して4件のコメントがあります。

  1. monksiiru より:

    kyou2さん、とても面白そうな小説ですね。ご紹介文読んで是非とも読んでみたくなりました。栄泉や国芳が出てくると聞いてとてもわくわくしてきました。偶然ですが、先日私も図書館で「歌麿の謎美人画と春画 著者/リチャードレイン 出版*とんぼの本」というムック本を読んでいたのです。春画っていうのこれで初めて見て凄い表現だわなーと思っていたところです。本当にグロテスクでもあり誇張表現ですよね。余談ですが、さっき家にあったビアズリーの画集を久々に見たら浮世絵の影響を受けたようなビアズリー版春画のような誇張表現の絵を発見してしまったところです。

  2. 署名落しでした より:

    さっきの投稿は 弥勒 でした

  3. 早速読んでみます より:

    浮世絵は使わせてもらっていますが、ちっとも知らず。
    いい本を紹介していただきました。

  4. 高嶺 より:

    英泉が出てくる小説なんですね。
    杉浦日向子さんの「百日紅」は池田善治郎こと英泉がとにかくでずっぱりです。北斎の居候、という話で…
    最近、江戸が面白くて、歌舞伎(鶴屋南北なども)も観てますが、文化が豊かで鮮やかですよね。
    明治に入って「文明開化」なんてしなくても十分文化があったのに。むしろ今も海外からのほうが評価が高いかも。

コメントは受け付けていません。

前の記事

花も虫も人も
雑記

次の記事

待ってました!