天才の目

先週期日最後の平日に、「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」へ行って来た。

レスター手稿は、ほとんどが例の鏡面文字で、ところどころにデッサンが入っているものだ。

内容は、天文学、土木建築、特に水についての考察が際立っていた。

科学者として最先端にいたことが分る。

そしてその粋を集めて描かれたものが彼の絵画である、ということが改めて感じられた展覧会だった。

実物の展示の前に、映像と内容にあわせた実験装置などがあり、自分で動かせるようになっていて面白かった。

水流に色々な形の障害物を置いたり、水面に水滴を垂らして波紋を作りそれぞれ手稿のデッサンと照らし合わせる仕組みだ。

レオナルドの水のデッサンは、画集などで以前から見ていたが、水流、波紋、渦などを執拗なくらい描いている。

どのくらいの時間、水を凝視していたのだろうかと思う。

目で見て、頭で理解して、手で描く、人間の機能はここまで凄いのかと、ただただ驚く。

レオナルドは自然の中にある法則を探求し、それを見つけ出し、描く。神の造形物はどれも完全で、完全なものの中に美は存在する。

自然を完璧に写しているから、デッサンに誇張やゆがみ、独善的な線は無い。だから冷たいほど美しいと思う。

また、人体や草花、水、地球そういうすべての自然に対して、平等に興味や探求心を持って描いていることにも、観察者、科学者としての目を感じた。

地球と人体の相似を綴ったものは、実にダイナミックで崇高だと思った。

 「 大地には植物的な活力が宿っている

   大地それ自体が肉体なのである

   地球の軟骨は凝灰岩であり

   その血液は水脈であり

   心臓の内部にある心室は海洋である

   ・・・・・・             レスター手稿より 」

レスター手稿のほかに、解剖図などがある他の手稿のファクシミリ版も展示されており、

すべての手稿が数台のパソコンで自由に見る事が出来た。

見終わって、同じ天才と称されるミケランジェロとの違いを思った。

レオナルドは森羅万象に目を向けその一つとして、完全な肉体と精神を持つ人間描いた。

ミケランジェロは徹底して人間に目を向け、完全な人間から次第に、矛盾にゆがむ肉体と精神を描いた。

そんな風に思った。

「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」

http://www.leonardodavinci.jp/index.html

展覧会は終わってしまったけれど、手稿の所有者である、ビル・ゲイツ氏や養老さんなどの話が聞けます。

天才の目” に対して1件のコメントがあります。

  1. ワイン より:

    こんな話をきいたことありますか?
    ダ・ヴィンチは、人間の目の解剖図を描きたかったけれど、生の眼球にメスをいれると流れ出してしまい、さりとて眼球を直接ゆでると縮んでしまって使いものにならず・・それで考えに考えた末、卵の白身のなかに眼球をおとし、白身ごと茹でたんだって。そして、固まったものにメスをいれて解剖図を描いたとか。
    ずい分昔に聞いた話で、もしかすると少し違うかもしれませんが、この話にはかなり私は興味をもちました。レオナルド・ダ・ヴィンチという人の科学者の一面ですね。彼が水の流れを観察してメモをたくさん残しているのは絵を描くためだったのか、それとも研究のためだったのか。

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